猫の多飲多尿の原因と病気の見分け方│獣医師が解説する早期発見のポイント
愛猫が突然たくさん水を飲むようになったり、トイレに行く回数が増えたりすると、とても心配になりますよね。
こうした変化は「多飲多尿」と呼ばれ、さまざまな病気の初期症状として現れることがあります。
特に、腎臓病や糖尿病といった病気は、進行すると命に関わる恐れもあるため、早期発見と早期治療がとても大切です。
今回は、猫の多飲多尿の見分け方や原因となる病気、さらに飼い主様ができる対策についてご紹介していきます。
■目次
1.多飲多尿とは? 正常値との違い
2.多飲多尿を引き起こす主な病気
3.多飲多尿以外に注目すべき変化
4.早期発見のために飼い主様ができること
5.予防と生活環境の整え方
6.おわりに
1.多飲多尿とは? 正常値との違い
多飲多尿とは、たくさん水を飲み、尿の量が増える状態を指します。
健康な猫では、体重1kgあたり約40〜60mL/日の水を飲むといわれています。
つまり、体重5kgの猫であれば、1日に200〜300mLのお水が必要になる計算です。
また、尿の量は飼育環境によって多少の違いはありますが、体重1kgあたり15〜30mL/日が目安とされています。
これらの数値を明らかに超えている場合には、多飲多尿と考えられます。
特に、飲水量が体重1kgあたり100mL/日を超えている場合は、体に異常が起きている可能性が高く、注意が必要です。
ご家庭で正確な飲水量や尿量を測定するのは難しいかもしれませんが、水の減り具合や猫砂の濡れ具合を日ごろから観察することで、おおよそのチェックは可能です。
特に気にしていただきたいポイントは、水飲み場に行く回数や、一度に水を飲む時間の長さです。
もともと猫はあまり水を飲まない動物ですので、飲水量の増加は見逃してはいけない大切なサインといえます。
2.多飲多尿を引き起こす主な病気
多飲多尿を引き起こす原因には、以下のようないくつかの病気が考えられます。
◆慢性腎臓病
中高齢の猫に多い病気で、腎機能が低下すると尿を濃縮できなくなり、体内の水分を保つために普段より多くの水を飲むようになります。
初期には、食欲が落ちたり、体重が減ったりすることもあります。
◆糖尿病
尿中に糖が排出されるときに水分も一緒に失われるため、強い喉の渇きを感じて水をたくさん飲むようになります。
初期には食欲が増えることがありますが、進行すると逆に食欲が低下してきます。
◆甲状腺機能亢進症
代謝が活発になり、体温上昇や脱水を防ぐために水を多く飲むようになります。
多飲多尿に加え、「たくさん食べているのに体重が減る」という特徴的な症状が見られます。
特に、筋肉量の低下が関係して体重が減少するのがポイントです。
◆その他の疾患
尿路感染症や肝臓病なども、多飲多尿を引き起こす原因となることがあります。
▼泌尿器疾患についてはこちらで詳しく解説しています
▼肝臓病についてはこちらで詳しく解説しています
3.多飲多尿以外に注目すべき変化
多飲多尿を引き起こす病気は、ほかにもさまざまな症状を伴うことがあります。
そのため、以下のような変化がないか日ごろからチェックすることが大切です。
・食欲の変化(増加または減少)
・体重の変化(特に体重減少)
・活動量の変化
・グルーミング習慣の変化(毛づやが悪くなる、毛並みが乱れるなど)
・排尿行動の変化(トイレ以外での排尿、頻尿、排尿困難など)
これらの小さな変化も見逃さずに観察し、記録しておくことで、異常の早期発見につながります。
4.早期発見のために飼い主様ができること
以下の方法を参考にして、飲水量や尿量の変化にいち早く気づけるようにしましょう。
・容器に入れる水の量をあらかじめ測っておき、交換時にどれだけ減ったかを確認する
・一度に水を飲む時間を測ってみる
・トイレに行く回数を記録しておく
また、これら以外にも、元気の有無や食欲、活動量、体重などの変化を日ごろからメモしておくことも早期発見につながります。
記録する際は、いつから症状が現れたか、どの程度の変化があったかをできるだけ具体的に残しておくと、診察時にとても役立ちます。
猫は体調が悪くても普段どおりに見せようとすることが多いため、気づかないうちに病気が進行してしまうこともあります。そのため、これらの項目に少しでも異変を感じたら、早めに動物病院を受診して相談しましょう。
5.予防と生活環境の整え方
多飲多尿の原因となる病気を予防するためには、食事管理と生活環境の整備がとても大切です。
◆食事管理
良質なタンパク質を含むバランスの良い食事を心がけましょう。
また、水分摂取を促すためにウエットフードを取り入れる工夫もおすすめです。
◆生活環境の整備
ストレスを減らすことも、健康維持には欠かせません。
愛猫がしっかりリラックスできるように十分な遊び時間の確保や、静かに休めるスペースを整えてあげましょう。
◆定期的な健康診断
日ごろの観察・記録に加えて、定期的な健康診断もうまく取り入れていきましょう。
多くの飼い主様は1年に1回の検査を受けていらっしゃるかと思いますが、7歳以降の高齢期に入ると病気のリスクが高まります。
そのため、当院では半年に1回の健康診断をおすすめしています。
健康診断では、血液検査や尿検査を実施し、多飲多尿の原因となる病気が隠れていないかをしっかり調べます。
愛猫の健康を守るためにも、ぜひ積極的にご活用ください。
6.おわりに
多飲多尿は、腎臓病をはじめとするさまざまな病気の重要なサインです。
これらの病気は、放っておくと徐々に悪化してしまいますが、適切な治療と生活管理によって症状をコントロールできる場合もあります。
ご家庭では飲水量や尿量の変化だけでなく、活動量や食欲、体重なども普段から注意深く観察・記録し、小さな変化を見逃さないことが大切です。
そして少しでも気になる様子があれば、自己判断せずに早めに動物病院へご相談ください。
愛猫の小さなサインを見逃さず、早期発見・早期治療につなげていきましょう。
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