猫の甲状腺機能亢進症について|高齢の猫に多く、気づきにくい病気
猫が高齢になると、毛並みの悪化や体重減少など、身体に生じる変化がいくつかあります。その中には単に加齢による影響だけではなく、甲状腺機能亢進症が原因となっているものがあります。
今回は高齢猫に多い、猫の甲状腺機能亢進について症状や原因、治療法などを解説します。
■目次
1.よく見られる症状
2.原因
3.診断
4.治療
5.日常の注意点や予防
6.最後に
1.よく見られる症状
猫がシニア期(一般的に7歳~)を迎えると、以下のような変化が現れます。また甲状腺機能亢進症を発症していた場合も同じような症状が現れます。
・食欲は旺盛なのに体重が減った
・吐き気を催すことが増えた
・以前よりも元気で活動的になったように感じる
・水を飲む量が増え、尿量も増えた
・毛並みやツヤが悪化した
甲状腺機能亢進症は身体の消耗が激しいため、最終的に全身の衰弱を招きます。
これらの症状が見られても、「年をとったため」と老化が原因と思ってしまったり、他の病気で同じような症状が見られたりするため、見過ごされてしまうことが多くあります。
早期発見が難しいため、高齢の猫でこのような気になる症状が出たら病気を疑いましょう。
2.原因
猫の喉の近くにある甲状腺という器官が、何らかの原因で大きくなった(良性の腫瘍あるいは過形成)結果、そこで分泌される甲状腺ホルモンが過剰に生成されます。
甲状腺が大きくなる詳しい原因はわかっていませんが、食事や環境などが関わっていると考えられています。
甲状腺ホルモンは、全身の代謝機能を活発にさせる働きがあります。甲状腺ホルモンが過剰に生成されることによって、体温の上昇や心拍数の増加といった活動性の促進を必要以上に身体に強いることとなり、消耗が激しくなります。
3.診断
診断では主に触診と血液検査を行います。
触診では、喉の近くにある甲状腺が大きくなっていることを、触って確かめます。
血液検査では血液中の甲状腺ホルモンの数値を測定していきます。
また、似たような症状が見られる他の病気の可能性を否定したり、腎臓病や心臓病などの併発疾患がないかどうかを確認したりするために、X線検査や超音波検査、血圧測定などの検査を行うこともあります。
4.治療
甲状腺機能亢進症の治療には、投薬による内科治療と手術による外科治療があります。
当院では基本的に、お薬の内服によって状態をコントロールする内科治療を選択しています。内科治療では抗甲状腺ホルモン薬を投薬していきます。
治療は長期にわたります。適切な投薬量でないと十分な効果が得られなかったりするため定期的に診察や検査を行って、個々に合ったお薬の服用量を調整しながら、良好な状態を維持できるようにします。
また、甲状腺機能亢進症用の療法食を使って、甲状腺ホルモンの主成分となるヨウ素を制限する場合もあります。
外科治療では腫大した甲状腺の一部を摘出する方法がとられます。
5.日常の注意点や予防
甲状腺機能亢進症の予防方法はありません。根本的な解決が難しい病気ですので、早期発見、早期治療が愛猫のその後に関わります。
高齢になると様々な病気にかかりやすくなりますが、他の病気の診断のために検査をしたところ、偶然この病気が見つかることがあります。また、高齢の猫で定期健診を受けたところ、肝臓の数値が高かったために、肝臓の病気を疑って発見されることもあります。検診で肝臓の数値を指摘された場合は、様子を見ずに詳しく検査をしてもらいましょう。
普段、意識して観察しないと見逃してしまう変化をいくつか紹介しましたが、早期発見が時に難しいことがあるため、定期的な健康診断を受けるととに、何か気になる様子があれば、一度ご相談を含め来院されることをおすすめします。
当院の健康診断についてはこちらの記事でも解説しています。
・定期的な健康診断①
・定期的な健康診断②「身体検査について」
・定期的な健康診断③「血液検査について」
・定期的な健康診断④画像検査(レントゲン検査・エコー検査)
6.最後に
猫の甲状腺機能亢進症は10歳以上でよく見られる病気です。繰り返しにはなりますが、この病気は症状がわかりづらく、一見すると老化に伴う心身の変化として捉えられてしまいます。特に食欲はあるものの体重減少が見られる場合や、活動的になったと感じられた際は、一度この病気かどうかを獣医師にチェックしてもらいましょう。
当院では飼い主様と愛猫の楽しい生活の支えになるため、病気の早期発見・早期治療に力を入れています。大切な愛猫が健やかな生活を送るためのお手伝いができれば幸いです。
にゅうた動物病院|相模原市 相模大野・東林間の動物病院
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