トイレでの異変は病気のサイン? ~犬と猫の泌尿器疾患について~
最近愛犬愛猫のトイレの回数が多い、逆にほとんどトイレに行かない、尿に血が混じっている、トイレ以外で排尿してしまう、排尿の際に痛そう、苦しそうに見える、このような症状が見られたら、尿路結石症や膀胱炎、前立腺肥大など、泌尿器と呼ばれる器官の病気である可能性があります。
これらの病気は犬や猫を飼っている飼い主様が経験する身近な病気のひとつです。
今回はこの病気の症状、原因、治療方法、日常の注意点について解説します。
目次
1.泌尿器疾患の様々な症状
2.泌尿器疾患で考えられる原因
3.泌尿器疾患の治療について
4.日常の注意点
5.最後に
1.泌尿器疾患の様々な症状
犬と猫の泌尿器疾患の主な症状は頻尿、血尿、トイレ以外での排尿、排尿痛など、様々な症状を示します。
例えば、膀胱炎では膀胱粘膜の炎症から残尿感による頻尿、トイレ以外での排尿、排尿痛となり、炎症によって膀胱粘膜が傷つくことで出血し、血尿を起こします。
また、泌尿器疾患により尿道閉塞と呼ばれる状態になると、命の危険が生じることもあります。
尿道閉塞は、尿路結石や膀胱炎もしくは尿道炎に伴う血餅(読み方:けっぺい、血液が凝固したもの)や炎症産物、腫瘍によって尿道が閉塞されてしまう状態です。
尿道が閉塞され尿が排出できない状態が24時間以上継続してしまうと、死亡率が大きく上昇します。
泌尿器疾患についてはこちらの記事でも解説しています
犬と猫の尿路結石症について|以前よりトイレの回数が増えたら要注意
犬と猫の膀胱炎について|犬と猫で多い病気の1つ
2.泌尿器疾患で考えられる原因
犬と猫の泌尿器疾患の原因は細菌感染、体質、食べ物、ストレス、生活環境、飲水量低下、性ホルモンの分泌量の変化など多岐にわたります。
例えば、犬の尿路結石症や膀胱炎は細菌感染が原因になることがあります。
犬の尿路結石症や膀胱炎の一般的な原因菌としては、消化管内や皮膚に常在している大腸菌、ブドウ球菌がよく検出されます。
一方、猫の泌尿器疾患は犬と比べて細菌感染が原因となるものは少ない傾向にあり、猫の膀胱炎はストレスや生活環境、飲水量低下、結石によるものが多く見られます。また、猫の尿路結石症は、膀胱炎と同様に飲水量低下に加え、ミネラル分の多い食事内容などが原因になるケースが多く見られます。
加えて、高齢で未去勢のオス犬に多く見られる前立腺肥大は精巣から分泌される性ホルモンの分泌量の変化により引き起こされます。前立腺は尿道の付近にありますので、肥大することによる尿の排出がうまくいかなくなり、排尿困難や血尿などの症状が見られます。
犬と猫の去勢についてはこちらで解説しています
犬の去勢手術とは~男の子のわんちゃんを迎える飼い主様へ~
猫の去勢手術とは~男の子のねこちゃんを迎える飼い主様へ~
3.泌尿器疾患の治療について
泌尿器疾患の治療法は、手術を中心とした外科治療と薬剤の投与を中心とした内科治療があります。どちらの治療法をとるかは、動物の状態と検査内容から総合的に判断されます。
泌尿器疾患を治療する場合、まずは内科治療を選択し、症状の改善を目指すことが一般的ですが、手術でしか対応ができない場合であったり、緊急性を伴う場合には外科治療を優先的に行う場合もあります。
例えば、細菌感染が原因の膀胱炎では抗生剤の投与により治療されます。その一方、結石が細菌感染由来ではない尿路結石症では結石を溶かす食事療法や結石を手術にて取り除く外科治療が選択されることもあります。
また、性ホルモンの分泌量の変化が原因となる前立腺肥大症では、未去勢で手術ができる状態であれば、去勢手術をすることで数週間から数か月で症状が改善することが多いため、去勢手術を通じて治療されます。
加えて、尿道閉塞では、物理的に詰まった結石を取り除く処置を行いますが、処置で結石を取り除くことができなかったり、内科治療では治療が難しい場合には外科治療を選択します。
尿道が詰まって尿が排出されない状態が続くと、腎不全などにより亡くなってしまうこともあります。
愛犬愛猫の尿が出ていない場合は、早急に動物病院を受診しましょう。
4.日常の注意点
犬と猫の泌尿器疾患の症状は、主に排尿時の異常です。
愛犬愛猫の排尿の異常を見逃さないために、おしっこの回数や量、色、においを日頃からよく観察することが重要です。
尿が出ない状態は危険なので、尿量は特に注意して観察することをおすすめします。
また、猫の泌尿器疾患では生活環境や食事内容が関連していることも多いと言われています。
猫の場合は、猫が日々の生活でストレスを抱えていないか生活環境を見直したり、ミネラル分の多いごはんを頻繁に摂取していないか食事内容を見直したりすることが大切です。加えて、猫が汚れたトイレで排尿するのを嫌がり、排尿を我慢することを避けるため、飼育頭数プラス1個分のトイレを用意するのも効果的です。
5.最後に
犬と猫の泌尿器疾患の主な症状は頻尿、血尿、トイレ以外での排尿、排尿痛などがあげられ、様々な症状を示します。
泌尿器疾患によって尿道閉塞と呼ばれる非常に危険な状態になることもあり、24時間以上尿が出ない状態が続くと命の危険もあるため、迅速な治療が必要です。
また、病気の早期発見のため、おしっこの回数や量、色、においを日頃からよく観察することが重要です。
愛犬愛猫に普段と違う症状が見られたら、早めに動物病院を受診しましょう。
気になることがあれば当院までご相談ください。
にゅうた動物病院|相模原市 相模大野・東林間の動物病院