歩き方がおかしい、痛そう、これって病気? ~犬と猫の関節に症状が現れる疾患について~
愛犬や愛猫の歩き方が変わった、動きが悪い、または動かない、どこか痛そうにしている、抱っこしたときにキャンと鳴くような症状が見られたら、関節に症状が現れる疾患の可能性があります。
特に寒い時期には、関節の症状が悪化するケースが多く見られますので、注意が必要です。
今回は、秋から冬に増加する犬と猫の関節に症状が現れる疾患について解説します。
目次
1.関節によく見られる症状
2.間接に症状が現れる疾患の原因
3.間接に症状が現れる疾患の特徴
4.間接に症状が現れる疾患の治療と予防について
5.最後に
1.関節によく見られる症状
関節疾患は、発生部位や病気の程度によって様々な症状を示します。
一般的な症状として、跛行(読み方:はこう、片足をひきずるようにして歩くこと)、疼痛(ずきずきとうずくように痛むこと)などがあります。
症状が軽い場合は患部の軽い痛みのみですが、症状が進行すると痛みも強くなり、動きや歩き方に様々な異常が現れ、元気や食欲が落ちることもあります。
2.関節に症状が現れる疾患の原因
関節疾患の主な原因は「遺伝要因」と「環境要因」の2種類に分けられます。
遺伝要因は、ある疾患を発症する遺伝子を保有した状態で誕生した犬や猫が、生活習慣や生活環境といった要因に関係なく疾患を発症することを意味します。
一方環境要因は、偏った食事や運動不足といった生活習慣や、滑りやすい床など関節に負担をかける生活環境が原因で発症することを意味します。
3.関節に症状が現れる疾患の特徴
関節疾患は、犬の体格や品種によって発症しやすい病気が異なります。
例えば、ゴールデンレトリーバー、ラブラドールレトリーバーなどの大型犬は股関節形成不全になりやすく、チワワ、トイ・プードルなどの小型犬では膝蓋骨脱臼が多く見られます。
また、ミニチュアダックスフンド、フレンチブルドッグ、ウェルシュコーギーなどの軟骨異栄養犬種は、椎間板ヘルニアになりやすい傾向があります。
猫の場合は、犬に比べて品種ごとの体格差が小さいため、体の大きさによって発症する病気が変わるといったケースは少ないですが、スコティッシュフォールドでは骨軟骨異形成症が見られます。
また、加齢によって起こるとされる変形性関節症は、12歳以上の猫の70%以上が発症するというデータもあります。
猫は痛みを隠す動物なので、飼い主様が痛みに気づくのが難しいことがあります。しかし、高い場所に登らなくなったり、遊びが減ったりする場合は、痛みを感じている可能性があります。
4.関節に症状が現れる疾患の治療と予防について
関節疾患の治療法は原因によって異なり、大きく分けて外科治療と保存療法の2つがあります。
<保存療法>
保存療法は手術を伴わない内科的な治療法です。お薬の使用、ケージレスト(安静にすること)、コルセットの装着などが一般的です。炎症が原因の関節疾患や、高齢または持病があって手術ができない場合に選択されます。
<外科治療>
外科治療は、保存療法で症状が改善しない場合、または手術でしか病気の原因を取り除けない場合、あるいは症状が重度の場合に選択されます。手術により、根本的な問題解決を目指します。
加えて、関節疾患の予防には、適度な運動と体重管理が非常に効果的です。
肥満は足腰に大きな負担をかけるため、適度な運動を欠かさず、定期的に体重測定をすることで、愛犬や愛猫の体重管理をしましょう。
また、症状が慢性化している場合は、漢方での治療も選択肢の一つです。
漢方薬は症状を和らげるだけでなく、根本的な体質改善を目指せる治療法で、漢方の中には、筋肉や骨格の強化に役立つ成分が含まれているものもあります。
特に加齢によって筋力が衰え、症状が悪化してしまう骨関節炎には、漢方薬が効果的です。
関節疾患の症状が悪化すると運動量が減り、筋力が衰えてさらに症状が悪化するという悪循環に陥ることがあります。
運動不足は、筋肉や骨格の衰えを招くだけでなく、脳の機能低下にもつながります。しかし、筋肉や骨格を強化することで、この悪循環を断ち切り、QOL(生活の質)を改善することができます。
このような理由から、慢性化した関節炎は、漢方で状況を改善できる可能性もあるため、漢方を用いた治療についても、お気軽にご相談ください。
5.最後に
秋から冬にかけて寒さが厳しくなる時期は、関節疾患の症状が悪化しやすい時期でもあります。
これらの疾患は触診だけで診断が可能なケースもありますが、より適した治療を選択するために、CTやMRI、関節液の検査、血液検査など様々な検査が必要になることもあります。
また、関節の動きについては、数年前と比較して現在の動きに変化があるか、という観点から愛犬や愛猫の様子をご確認いただくとよいでしょう。
関節の症状は慢性的に現れるものも多く、時間をかけて徐々に状態が変化する場合、どうしても変化に気づきづらいこともあります。
病気によっては迅速に治療を開始する必要がある場合もあるため、愛犬や愛猫にこの記事で紹介したような気になる症状が見られたら、当院へご相談ください。
■関節に症状が現れる疾患についてはこちらで解説しています
・犬の膝蓋骨(パテラ)脱臼について|滑りやすい床での激しい遊びは要注意
・猫の変形性関節症について|高齢だからと見過ごしがちな関節の痛みが改善できることも
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