予防医療の重要性について ~身近なワクチン接種・ノミやマダニの駆除・フィラリア予防・避妊や去勢手術のお話~
愛犬・愛猫と共に生活する飼い主様の最も大きな願い、
それは「大切なご家族である愛犬・愛猫が健康で長生きすること」ではないでしょうか。
当院もその思いは同じであり、そのためにも必要なのが予防医療と病気の早期発見、早期治療であると考えています。
予防医療というと堅苦しいイメージを持つ方も多いかもしれません。
しかし、これらにはワクチン接種やノミ・マダニの駆除、フィラリア予防、避妊・去勢手術という身近なものが含まれます。
今回はこれらの対策を行う目的に焦点を当てて、犬・猫の予防医療と、当院の予防プログラムであるウェルネス会員制度について解説します。
目次
1.なぜ予防医療が重要なのか
2.予防医療の種類と特徴
3.まとめ
1.なぜ予防医療が重要なのか
人間に限らず、犬や猫でも予防できる病気と予防できない病気が存在します。
その中でも予防医療は予防できる病気に焦点を当て、病気の発症を抑えたり、万が一発症しても病気の重症化を抑えることを目的としています。
2.予防医療の種類と特徴
犬や猫における予防医療にはどのようなものがあるでしょうか。
とりわけ重要となるものを以下に紹介します。
◆混合ワクチン接種
犬・猫ともに混合ワクチンと呼ばれる専用のワクチンがあり、1本の注射で複数の病気の予防に効果があります。
例えば、犬に感染するジステンパーウイルス感染症や、犬猫両方に感染するパルボウイルス感染症は、感染力が強く致死率も高い危険な病気ですが、混合ワクチンを接種することで、発症や重症化を抑えることができます。
また、混合ワクチンはその種類によって予防できる病気が異なり、当院では以下のワクチンを取り扱っています。
犬:5種混合ワクチン、7種混合ワクチン
猫:3種混合ワクチン、5種混合ワクチン
これらのワクチンは適切な時期に接種を行うことが重要です。
当院ではライフスタイルによって、犬の場合は5種と7種、猫の場合は3種と5種のどちらのワクチンを接種するのか飼い主様と相談して決めています。
また、体調や体質を考慮してワクチンの抗体価検査を行い、抗体が残っている時はワクチン接種を見送ることもあります。
◆狂犬病ワクチン接種
狂犬病は、一度感染し発症すると致死率はほぼ100%という恐ろしい感染症です。
人間にも感染することで知られており、狂犬病ワクチンを接種することでこの病気を予防することができます。
日本では狂犬病予防法に基づき、生後91日以上の犬には毎年1回の接種が義務付けられています。
日本は60年以上、狂犬病の清浄国(特定の病気が発生していない、あるいはワクチン接種などによって撲滅された国)を保っていますが、台湾では半世紀ぶりに野生動物での狂犬病が発生した例もあり、決して安心できません。
世界的に見ても、日本のように狂犬病が蔓延していない国は数えるほどしかなく、ヒトやモノが多く行き交う昨今の状況では、いつ日本に狂犬病が入ってきてもおかしくありません。
そのため、狂犬病ワクチンはワクチンを接種することで狂犬病を発症しないようにするだけでなく、皆で接種することによって日本に狂犬病が入ってきた時に広がりにくいようにするために大切な予防注射になります。
◆ノミ・マダニ予防
ノミ・マダニ予防は基本的に月に1回お薬を投与して行います。
ノミやマダニはお散歩中に寄生してしまったり、人の体に付着したものを持ち込むことによって寄生します。
ノミやマダニが寄生することによる皮膚の痒みや炎症に加えて、様々な感染症を媒介するため予防がとても大切です。
また、一般的にノミやマダニは春から秋にかけての暖かい季節に活動が盛んになることで知られていますが、ノミやダニは暖かい室内であれば冬でも繁殖する危険性があり、マダニは秋から冬にかけて卵から孵化した幼虫、若虫が活動を開始することから、より万全にノミ・マダニを予防するため、当院では1月から3月を含めた通年での予防を推奨しています。
ノミ・マダニが媒介する感染症としては、ノミに寄生された場合、瓜実条虫症(うりざねじょうちゅうしょう)と呼ばれる感染症に感染することがあります。
この病気は、犬や猫が瓜実条虫(一般的にはサナダムシという名前で知られています)という寄生虫を持ったノミを飲み込むことで感染し、瓜実条虫に大量に寄生されることで激しい下痢や体重減少を起こすことがあります。
また、マダニに寄生された場合、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)と呼ばれる感染症に感染することがあります。
この病気は、犬や猫がこの感染症のウイルスを保有したマダニに吸血されることで感染し、発症すると発熱や嘔吐などが見られます。また、人にも感染し、関東でも死亡する例の報告が増えています。
さらに、最近ではフィプロニルという成分に耐性があるノミ・ダニが出てきているため、主成分がフィプロニルでないタイプの予防薬をお勧めしています。
犬や猫だけでなく、周りの人間の健康を守る意味でも、これらの予防は重要な意味合いを持っています。
犬と猫のノミアレルギー性皮膚炎についてについてはこちらで解説しています
◆フィラリア予防
フィラリア症は、動物の血管にフィラリアと呼ばれる寄生虫が寄生することで起こる病気で、蚊がこの寄生虫を運び、吸血の際に寄生虫が動物の血管に入り込むことで感染します。
フィラリアは感染した動物の体内で成長して成虫になり、肺動脈や心臓に寄生し、循環障害によってさまざまな症状が見られます。
フィラリア症は重篤化すると命の危険もあり、治療には手術を必要とするケースもあるため、飼い主様と動物に大きな負担が伴います。
また、犬だけでなく猫にも感染します。猫の場合、犬とは違い検査や診断が難しく、中には少数の寄生で突然死を引き起こすこともあるため、猫も同様に予防することが重要です。
フィラリア症の予防については別記事で取り上げているので、詳しくはこちらをご覧ください
◆当院で取り扱っている予防薬
当院では、飼い主様のライフスタイルや愛犬や愛猫の健康状態に合わせて、最適な予防薬をご提案させていただきます。以下は当院で取り扱っている予防薬の一部です。
<フィラリア予防薬>
・錠剤:内服(月1回)
・イベルメック:内服クッキータイプ(月1回)
<ノミ・マダニ予防薬>
・フィプロスポット:旧タイプのスポット剤(月1回)
・ブラベクトスポット:新タイプのスポット剤(3~4か月に1回)
・クレデリオ錠:内服チュアブル錠タイプ(月1回)
・ネクスガード:内服ジャーキータイプ(月1回)
・ブラベクト錠:内服ジャーキータイプ(3か月に1回)
<オールインワン>
・クレデリオプラス錠:内服チュアブル錠タイプ(月1回)
・ネクスガードスペクトラ:内服ジャーキータイプ(月1回)
・猫用 アドボケート:スポット剤(月1回)
予防薬は動物用医薬品として認可されたものをきちんと使うことが重要です。
◆避妊・去勢手術
避妊・去勢手術は、比較的早期に行うことで、望まぬ妊娠を防ぐだけではなく、主に性ホルモンに関連するさまざまな疾病(女の子では乳腺腫瘍、男の子では精巣腫瘍など)を予防したり、飼い主様を悩ませてしまう問題行動のコントロールや、発情によるストレスの抑制などに効果があります。犬・猫の平均寿命が以前より長くなっていることから、高齢になった時に起こりやすい病気の予防ができるため、避妊・去勢手術は予防医療の中でも重要な位置づけになっています。
避妊・去勢手術については別記事で取り上げているので、詳しくはこちらをご覧ください
3.まとめ
愛犬・愛猫にとって、予防によって得られるメリットは非常に大きく、適切に予防を行うことで、命の危険もあるような病気の発生を防ぐことはもちろん、狂犬病や重症熱性血小板減少症候群(SFTS)のような人間にも感染する危険性のある病気を防ぐことができます。
また、ノミやマダニは活動が活発化する春から秋だけでなく、1月から3月を含めた通年での予防が重要です。
にゅうた動物病院では、「大切な愛犬・愛猫に健康で長生きしてほしい」という、飼い主様と当院共通の願いを実現していくため、「ウェルネス会員制度」を用意しています。
ウェルネス会員制度は健康診断や各種予防診療・予防薬の接種を定期的に行うことで、大切なご家族である愛犬・愛猫の健やかな生活をサポートすることを目指して作られたプログラムです。
このプログラムでは飼い主様と愛犬・愛猫に向けて様々な特典を用意しておりますが、その中でも私たちが最も大きなメリットであると考えているのが、
「会費に1年間に必要な予防や健康診断が含まれており、会員カードでどの予防がいくつ必要なのかがわかりやすく管理できる」という点です。
これまで、動物病院で一般的に受けられる予防医療はそれぞれ独立して存在するものが多く、「どの予防医療をどのタイミングで受ければよいのかわかりづらい」というご相談をいただくこともありました。
当院のウェルネス会員に入会いただければ、当院が考える健康を維持するのに必要な予防医療と定期健診を漏れなく受けることができます。
「病気の早期発見」と「予防できる病気の予防」を実現し、大切なご家族と健康で幸せな時間を送るために、ぜひ当院のウェルネス会員制度をご利用ください。
<ウェルネス会員制度についての詳細はこちら>
にゅうた動物病院|相模原市 相模大野・東林間の動物病院
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