犬や猫の慢性腎臓病について|進行するまで症状がわかりづらい病気
犬や猫の老齢期によくみられる疾患として、慢性腎臓病が挙げられます。初期では目立った体調の変化がわかりにくく、不調が現れたときには腎機能がかなり低下していることがあるため、元気そうに見えても定期的に検査を受けて早期発見を心がけることが重要です。
今回は、慢性腎臓病の症状や原因、治療の方法などを解説します。
■目次
1.よくみられる症状
2.原因
3.治療について
4.日常での注意点や予防法
5.最後に
1.よくみられる症状
慢性腎臓病は、進行状況によって症状が変化します。
まず初期では、ほとんど症状がありません。血液検査でも異常値はみつかりませんが、尿検査で尿比重の低下や蛋白尿、画像検査により腎臓の形状の異常が認められることがあります。
腎機能の低下が進むと、水をたくさん飲み、尿をたくさん排泄する多飲多尿や、元気ではあるものの痩せていくなどの症状が現れます。
これらは、慢性腎臓病のほか、糖尿病や他のホルモン疾患でもみられるため、検査を行い、症状の原因を正確に特定する必要があります。
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症状が進行すると、本来尿として排泄される老廃物が血液中に残ることで尿毒症の症状が起こり、食欲低下、元気消失、嘔吐、下痢、便秘などがみられます。
そして末期になると、さらに尿毒症が進行し、けいれんや昏睡などがみられます。
また、まれに尿路結石症による尿閉が原因で起こった急性腎障害が、慢性腎臓病に移行することもあります。
2.原因
慢性腎臓病の直接の原因は様々です。
加齢に伴う腎機能の低下や、品種による遺伝的要因、細菌や猫伝染性腹膜炎(FIP)などのウイルスの感染による腎炎、結晶や結石などによる尿路の閉塞、免疫機能、腫瘍、他の病気の合併症などがあります。
しかし、ほとんどの犬や猫の慢性腎臓病は原因不明です。
泌尿器疾患についての詳細はこちらで紹介しています
3.治療について
残念ながら、犬や猫の慢性腎臓病を根本から治療する方法はありません。そのため治療は症状の緩和と腎臓の負担軽減が目的となります。
また、できるだけ早い段階から腎臓のケアを始めることが健康寿命を延ばすポイントになります。
代表的な治療法として、食事療法、腎臓の機能を補助するお薬の投与、体内の水分バランスを調整するための点滴療法が挙げられます。
慢性腎臓病は完治が難しい病気のため長く付き合っていく必要がありますが、早期に発見し治療することで、病気が悪化するまでの時間と寿命を延ばすことができます。
加えて、腎機能が弱まっている中で老廃物の排出を促すには、可能な限りたくさん排尿させる必要があります。そのため、積極的な水分補給が重要です。
4.日常での注意点や予防法
犬、猫ともに慢性腎臓病を完全に予防するのは難しいものの、症状が出ていなくても定期的に健康診断を行うことで数値の変化に気づきやすくなり、その結果慢性腎臓病の早期発見につなげられます。
また、慢性腎臓病と診断された場合は、様子をよく観察し獣医師と連携して状況に応じ適切なケアを行っていきましょう。
5.最後に
犬や猫の平均寿命が延びたことで、慢性腎臓病は身近な病気のひとつとなりました。発症は避けられなくても、個々の状態をしっかり把握しケアを行うことで生活の質を維持することが可能となります。
具体的に、当院では10歳を過ぎたら、半年に一度くらいのペースで健康診断を受けることをおすすめしています。
また、10歳に満たない場合でも、体調に変化があった場合には年に1回だった健康診断の周期を短い周期でご提案させていただく事もあります。
加えて、慢性腎臓病によって食欲が落ちている時に給餌や投薬が必要になると、動物達も飼い主様も強いストレスを感じてしまうと思います。
そんな時に、当院ではストレスを和らげる一つの方法として、食道チューブの設置をご提案することがあります。この方法であれば、動物への給餌や投薬がずっとスムーズに、そしてストレスフリーに行えるようになります。
当院では慢性腎臓病の治療に際し、飼い主様と愛犬・愛猫との関係性を守りながら治療ができるかを真剣に考えています。
どうすれば飼い主様と愛犬・愛猫が苦痛を感じることなく、少しでも長く一緒に過ごせるかを念頭に置いた治療プランをご提案して参りますので、どんな些細なことでもご相談ください。
当院の健康診断についてのご紹介はこちらから
・犬と猫の急性腎障害について|進行が早く早急な治療が重要
・健康診断の重要性
・定期的な健康診断
・定期的な健康診断②「身体検査について」
・定期的な健康診断③「血液検査について」
・定期的な健康診断④画像検査(レントゲン検査・エコー検査)
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