にゅうた動物病院コラム

犬と猫の急性腎障害について|進行が早く早急な治療が重要

犬と猫の急性腎障害について|進行が早く早急な治療が重要

急性腎障害とは、数時間から数日という短い期間で急に腎臓がダメージを受けてしまう病気のことで、犬・猫どちらでも発生します。
似たような病気に犬や猫の慢性腎臓病が挙げられますが、こちらは進行性で根治が見込めないのに対して、急性腎障害では早めに対処すれば腎機能の回復が期待できるという違いがあります。

治療には原因を特定することが重要なので、今回はその原因を中心に、症状や治療法などについて解説します。

犬や猫の慢性腎臓病についてはこちらの記事で解説しています

■目次
1.原因
2.よくみられる症状
3.診断について
4.治療について
5.日常での注意点や予防
6.最後に

1.原因


急性腎障害の主な原因としては、下記が挙げられます。

尿路結石
猫で特に多いのが尿路結石によるものです。結石が尿道や尿管などに詰まってしまうと尿が排泄されず、急性腎障害に陥ってしまいます。
猫は下部尿路疾患(膀胱炎)にかかりやすいので、持病がある場合には注意が必要です。

尿路結石についてはこちらの記事で解説しています

尿路感染による細菌性腎盂腎炎
犬や猫の腎盂腎炎の主な原因は細菌感染です。大腸菌やブドウ球菌といった、尿路感染症を引き起こす菌が尿管を通じて腎臓に感染することにより発症します。

中毒物質の誤飲誤食
犬や猫にとって毒となってしまうものが存在します。腎臓にダメージを与えるものとして、食品ではブドウやレーズン、植物ではユリやチューリップ、化学物質ではエチレングリコール、などが知られています。

食べてはいけないものについてはこちらの記事で解説しています

レプトスピラ症
レプトスピラ症は、西日本でよく報告される犬の感染症です。レプトスピラ菌はネズミなどの野生動物の尿中に排泄されます。お散歩中にそれらの尿や汚染された水や土と接触することで感染します。
レプトスピラ症は人にも感染する人獣共通感染症(ズーノーシス)ですので、犬が人への感染の原因になる可能性があり、注意が必要です。

その他の病気
その他、悪性腫瘍や重度の感染症などが原因で発症することもあります。

 

2.よく見られる症状


原因によっても多少異なりますが、元気・食欲の低下、嘔吐などの体調不良が突然発症し、急速に進行します。
また、無尿(まったく尿が出ない状態)や乏尿(尿が少ない状態)、血尿などが見られることがあります。
全身の状態が悪化している場合には、脱水で目が落ちくぼむ、元気・食欲がない、ふらつく、といった症状も現れます。
これらの症状はその他の疾患でも認められるため、臨床症状から急性腎障害を疑うことは難しいと言えます。

 

3.診断について


毒性物質の誤飲誤食がないか、あるいは持病の有無やワクチン接種の状況などを飼い主さんにお聞きし、原因をある程度絞り込みます。
そして、腎臓病の診断は、様々な検査を組み合わせ、総合的に判断していきます。
院内では身体検査、血液検査尿検査、画像検査 (レントゲン検査やエコー検査)などを実施して、腎臓の状況を確認します。

 

4.治療について


中毒物質の誤飲直後で、吐かせることが可能な場合は催吐処置を行います。その際には、催吐薬(胃の中にあるものを吐かせる薬)や活性炭(中毒物質を吸着させる治療薬)を投与しますが、異物が鋭利で消化管を傷つけるなどのリスクがある場合には、内視鏡を使って異物を回収します。

加えて腎臓病治療では、輸液療法(点滴)で体に水分を補給し尿の産生を促すことが重要です。腎機能を低下させる原因を取り除くことで腎機能の回復を促します。

尿路結石の場合は結石を取り除くために、緊急の手術を行います。そして、尿路感染による細菌性腎盂腎炎の場合は抗生剤の投与レプトスピラ症に対しては抗菌薬を投与します。

 

5.日常での注意点や予防


膀胱炎を持病にもつ場合には、定期的に動物病院を受診して、結石ができていないか、治療はうまくいっているか、などを確認することが重要です。

また中毒物質の誤飲誤食を未然に防ぐために、犬や猫の届く範囲には中毒となる食品を置かない、観葉植物やお花を飾る際には毒性がないかを確認する、といったことに気を配りましょう。
レプトスピラ症は地域性がある病気なので、流行地域にお住まいの場合は、ワクチン接種によって予防することをお勧めします。

こうした対策を講じても、急性腎障害を発症してしまう可能性もあります。尿が出ていない、具合が悪そうなど、少しでも異変を感じたらすぐに動物病院を受診しましょう
腎臓へのダメージが少ない初期の急性腎障害では、早めに適切な治療を施せばその後も健康に過ごせることが多く、早期発見・早期治療が肝心です。

 

6.最後に 


急性腎障害が起こるには何らかの原因があり、その原因を予防することが重要です。また万が一発症してしまった場合には、冷静かつ迅速な対応が求められることを覚えておきましょう。
また、尿が出ない状態は急性腎障害の症状であるだけでなく、他の病気の可能性もあるため、異常が見られたらすぐにご連絡ください。

当院では、皆さまの愛犬・愛猫の健康と幸せを第一に考え、日々のケアから予防、治療まで全面的にサポートします。どんな些細なことでもぜひご相談ください。

 

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<参考文献>
原田佳代子. 5.急性腎障害. In: 犬と猫の腎臓病診療ハンドブック. 上地正実 監修. 2021 : pp.90-103. 緑書房.
International Renal Interest Society (IRIS). IRIS Kidney (iris-kidney.com)

 

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