猫の嘔吐はよくあること? 色や他の症状からわかる“見逃したくないサイン”
猫はグルーミングをよく行うため、飲み込んだ毛が胃の中にたまり、毛玉として吐き出すことがあります。そのため、嘔吐していても「いつものことかな?」と見過ごしてしまう飼い主様もいらっしゃるかもしれません。
しかし、嘔吐が繰り返される場合や、内容物の色・状態に違和感がある場合は、病気が隠れている場合もあります。嘔吐物の色や質感、ほかの症状の有無を観察することで、原因や緊急性の見極めに役立つこともあります。
今回は、猫の嘔吐について、色や症状ごとの原因の傾向と、受診の目安について詳しくご紹介します。
■目次
1.嘔吐の色別に見る原因の傾向|黄色・茶色・ピンク・血が混じるときは?
2.嘔吐の質感・状態でわかること|水っぽい・泡・未消化・異物など
3.嘔吐と一緒にみられる症状にも注目|下痢・元気消失・食欲不振など
4.どんなときに動物病院へ?|受診の目安と検査について
5.おわりに
1.嘔吐の色別に見る原因の傾向|黄色・茶色・ピンク・血が混じるときは?
嘔吐の原因を考えるうえで、まず注目していただきたいのが「色」です。色には、そのとき体の中で何が起きているのかを読み取るヒントが隠れています。
◆黄色
胆汁が混じった空腹時の嘔吐や、慢性胃炎、膵炎などが関係していることがあります。肝臓にトラブルがある場合にも、胆汁の混入で黄色い嘔吐が見られることがあります。
◆茶色
消化途中のフードであれば心配ない場合もありますが、胃からの出血や異物誤飲によるおそれもあるため注意が必要です。
◆ピンク色・血が混じる
胃や食道の粘膜に傷がついていたり、潰瘍や炎症が起きているサインかもしれません。呼吸器からの血液が混じることもあるため、早めの受診がおすすめです。
色だけで病気を判断することはできませんが「いつもと違うな」と感じたときの気づきが大切です。少しでも気になるようであれば、迷わずご相談いただければと思います。
2.嘔吐の質感・状態でわかること|水っぽい・泡・未消化・異物など
嘔吐物の色と同じくらい「どんなものを吐いていたか」も重要な手がかりになります。内容物の質感や形状などから、原因や重症度のヒントが得られることもあります。
◆水っぽい/泡状
空腹時やストレスの影響で、胃の中が空の状態で吐いてしまうときに見られます。透明〜白っぽい泡などが含まれる場合もあります。
◆未消化のフード
早食いや食べすぎ、吐出(食後すぐに吐き出すこと)などが考えられます。一時的なものなら心配ないこともありますが、消化機能がうまく働いていないときは、こうした嘔吐が繰り返されることもあります。
◆毛玉や草が混じる
毛づくろいや草の摂取が原因で、一過性に見られることもありますが、頻繁に吐く場合は毛球症や消化機能の低下が関係している場合があります。日常的に続くようであれば治療が必要になることもあります。
◆異物や不自然な内容物
おもちゃやひも、ビニール片などの異物を飲み込んでしまっているかもしれません。これらが胃や腸に詰まったり、粘膜を傷つけたりすると、腸閉塞や消化管穿孔といった緊急性の高い状態に発展することもあります。
「こんなものを吐いていた」と教えていただけると、診察の際にとても役立ちます。スマートフォンで写真を残しておくのもおすすめです。
3.嘔吐と一緒にみられる症状にも注目|下痢・元気消失・食欲不振など
嘔吐の状態に目が向きがちですが「ほかにどんな症状があるか」も重症度を見極める大切な手がかりになります。猫の体の中で起きている変化を、全体的に見てあげることが大切です。
◆下痢がある
消化管全体の不調や、細菌・ウイルス・寄生虫などの感染が関係していることがあります。嘔吐と下痢が同時に起きている場合は、体への負担が大きくなるため注意が必要です。
肝臓や腎臓の病気が影響していることもあるため、早めの受診がおすすめです。
◆元気がない/食欲がない
肝炎や膵炎、腎臓病といった内臓の病気が隠れているかもしれません。特に嘔吐や下痢が続いて水分や栄養がうまく取れないと、脱水や体力の低下を招くことがあります。
体力の少ない幼齢や高齢の猫では、より慎重な対応が求められます。
◆繰り返す嘔吐
中毒、膵炎、腎臓病、内分泌の病気など、なんらかの病気が背景にある場合があります。
一度だけの嘔吐で、その後元気にしている場合は経過観察でもよいことがありますが、何度も吐いたり、数日にわたって嘔吐が続くときは、体調に異変が起きているサインかもしれません。
小さな変化にも気づいてあげられるのは、日々一緒に過ごしている飼い主様だからこそ。ほんの少しの「おかしいな?」という感覚が、体調の変化を見逃さない大切なきっかけになります。
4.どんなときに動物病院へ?|受診の目安と検査について
猫が嘔吐したとき「病院に連れて行った方がいいのかな?」と迷われる飼い主様も多いのではないでしょうか。
以下のような症状がみられる場合は、体の中で何らかの異常が起きているおそれがあります。早めの診察が、重症化を防ぐためにも大切です。
・嘔吐物に黄色・茶色・赤・ピンクなどの色が混じっている
・異物を食べたかもしれない、または嘔吐物に異物が混ざっている
・1日に何度も吐く
・数日にわたって嘔吐が続いている
・嘔吐に加えて下痢がみられる
・ぐったりして元気や食欲がない
「しばらく様子を見ようかな…」と迷われることもあるかもしれませんが、愛猫の様子が少しでも気になるときは、早めにご相談いただくことをおすすめします。早期の対応によって、負担の少ない検査や治療で済むこともあります。
<診察時に行う主な検査とその目的>
体の中で何が起きているのかを探るために、猫の状態に応じて以下のような検査を行います。
◆身体検査
お腹を触ったり、聴診器で心音や腸の動きを確認したりしながら、全身の状態を細かくチェックします。脱水や腹痛、しこりの有無なども見逃さないように注意深く観察します。
◆血液検査
血液の状態から、肝臓や腎臓など内臓の機能、脱水の有無、炎症や感染の兆候などを調べます。少量の採血で済むことが多く、検査時間も比較的短いため、猫への負担は大きくありません。
◆画像検査(レントゲン/超音波)
レントゲンや超音波を使って、胃や腸の内容物、臓器の形や大きさ、異物の有無などを確認します。超音波検査は痛みを伴わず、体への負担も少ない検査のひとつです。
◆内視鏡検査
必要に応じて、細いカメラを口から挿入し、消化管の内側を直接確認します。同時に異物の除去や、粘膜の一部を採取して詳しく調べる処置なども行える場合もあります。
検査の内容は猫の症状や体調に応じて、獣医師が慎重に判断し、飼い主様にご説明したうえでご提案いたします。どの検査も、猫への負担をなるべく抑えながら丁寧に進めていきますので、ご安心ください。
5.おわりに
猫は嘔吐しやすい動物であるため「また毛玉かな」「少し食べすぎただけかも」と思ってしまうこともあるかもしれません。しかし、その嘔吐の中に、体からの小さなSOSが隠れていることもあります。
にゅうた動物病院では、飼い主様のお話をしっかりと伺いながら、一緒に愛猫の健康を守るお手伝いをさせていただきます。少しでも「いつもと違う」と感じることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
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