にゅうた動物病院コラム

犬と猫の炎症性腸疾患(IBD)について|下痢や嘔吐が長引く場合は要注意

犬と猫の炎症性腸疾患(IBD)について|下痢や嘔吐が長引く場合は要注意

犬や猫ではいろいろな原因で下痢が起こりますが、その中でもよく遭遇するのが炎症性腸疾患(IBD)です。最近では免疫抑制剤反応性腸症(IRE)とも呼ばれるように、これといった原因がわからず下痢が長く続き、免疫抑制剤による治療に反応することが特徴的です。

「動物病院から抗菌薬を処方されて飲んでいるけど、一向に下痢が治らない……」といったケースは、きちんとした診断ができていない可能性もあります。

今回は炎症性腸疾患の基本的な情報をお伝えしますので、愛犬や愛猫の下痢でお困りの際はご参考ください。

■目次
1.よく見られる症状
2.原因
3.診断について
4.治療について
5.日常での注意点や予防
6.最後に

1.よく見られる症状


炎症性腸疾患のよく見られる症状は下痢ですが、その他にも嘔吐や食欲不振といった消化器に関わる症状が現れる場合もあります。これらの症状は長く続き、3週間以上にもわたることが一般的です。
こういった症状は他の病気(寄生虫や細菌による感染症、腫瘍、ホルモンの病気など)でも現れるので、しっかりと検査して原因を突き止めることが大切になります。

さらに症状が重い場合、血液のタンパク質が腸から流出し、「蛋白漏出性腸症」を発症することがあり、これにより胸水や腹水が蓄積し、結果として呼吸困難を引き起こすことがあります。

 

2.原因


はっきりとした原因はわかっていませんが、免疫学的反応や遺伝的要因、腸内細菌叢の変化などが関わるのではと考えられています。
これらの原因によって腸の粘膜に炎症細胞が集まり実際に炎症が起こると、下痢や嘔吐などの消化器症状が誘発されます。

 

3.診断について


炎症性腸疾患と診断するまでには様々な検査が必要で、原因がわかるまでに時間を要することも多々あります。
まずは身体検査や糞便検査、血液検査、尿検査、画像検査(超音波検査やX線検査)などを実施して、下痢の原因を総合的に調べていきます。これらの検査で原因を特定できない場合は慢性腸症と診断され、さらに細かい分析が必要になります。

当院の画像検査(レントゲン検査・エコー検査)についてはこちらで解説しています

慢性腸症には、炎症性腸疾患(免疫抑制剤反応性腸症)の他にも、食事反応性腸症(FRE)、抗菌薬反応性腸症(ARE)、治療抵抗性腸症(NRE)に分類されているため、まずは食事療法と抗菌薬療法を試します。
これらの治療で症状が改善しない場合、内視鏡検査や開腹手術を実施して消化管の粘膜を一部採取し、その組織にどんな細胞がいるのかを顕微鏡で観察します。
消化管に炎症があり、組織の中に炎症細胞が見られる場合には免疫抑制療法を試し、無事に効くようであれば炎症性腸疾患と診断できます。

 

4.治療について


ステロイド剤と免疫抑制剤の内服を中心に治療を行い、それに加えて、抗生物質の内服食事療法(具体的には、低脂肪食への切り替え)も併用されます。

治療を進める中で、一時的に薬を休止できるケースも存在します。場合によっては、食事療法だけで症状の管理が可能なこともあります。
しかし、薬を休止できても、時間が経つと病気が再発することがありますので、注意が必要です。

 

5.日常での注意点や予防


原因がよくわかっていないため予防は困難な病気です。
消化器症状は犬や猫に多く見られることからつい様子を見てしまいがちですが、愛犬や愛猫の下痢が3週間以上続くようであれば炎症性腸疾患の可能性があるため、早めにご連絡ください。

 

6.最後に


下痢を起こす病気はたくさんあるので、適切な検査を実施して確実に診断しないと、誤った薬を漫然と使用してしまう危険性があります。様子を見ていてもなかなか下痢が治らない場合は、しっかりと検査をして原因を突き止め、原因に沿った治療を進めるべきと当院では考えています。

特に炎症性腸疾患の場合は診断に時間がかかってしまうケースが多いのですが、長く下痢で苦しむ愛犬や愛猫を救うためにも、検査の実施にご協力いただければ幸いです。
当院は、飼い主様と大切なご家族が一日も早く快適な生活を取り戻せるようサポートさせていただきたいと考えておりますので、ご不安に思うことがあればいつでもご相談ください。

 

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