犬と猫のアトピー性皮膚炎について｜かゆみで苦しむ愛犬・愛猫のために
犬や猫のかゆみによるトラブルは多くありますが、その中でも特に厄介なのがアトピー性皮膚炎です。
この病気では、強いかゆみが現れるためQOL（生活の質）が低下するだけでなく、完治が難しいことが多い点も問題です。また内服薬による治療だけでなく、その他の治療法との組み合わせや、ご家庭でのケアも重要なポイントとなります。
今回は犬や猫のアトピー性皮膚炎について、治療法やご家庭での対策を中心に詳しく解説します。
■目次
1.症状
2.原因
3.診断
4.治療
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ
１．症状
アトピー性皮膚炎では、皮膚の炎症によって強いかゆみを伴うため、以下のような症状が見られます。
・手足を舐める・噛む
・顔や首、耳を引っかく
・体を床や壁にこすりつける
これらの行動が続くと、次第に皮膚が赤くなったり、毛が抜けたり、出血したりすることもあります。
こうした症状は、耳、顔、足先、脇の下、おなか、尻尾の根元、股などによく現れます。飼い主様としては、これらの部位を注意深く観察し、異常が見られた場合には早めに獣医師に相談することが大切です。
２．原因
アトピー性皮膚炎が発症するメカニズムはとても複雑で、詳しいことはわかっていませんが、アレルゲンに対するⅠ型過敏症によって引き起こされる免疫の異常が関与していると考えられています。
さらに、最近の研究では以下のような様々な要因が関与していることが明らかになっています。
・遺伝的な要素
・飼育環境
・皮膚のバリア機能の破綻
・皮膚の細菌叢（細菌のバランス）の変化
アトピー性皮膚炎は犬・猫ともに3歳未満で多く見られますが、どの年齢でも発症する可能性があります。
３．診断
「かゆみ」の原因には様々な病気が考えられます。正確に診断するためには、問診や皮膚の検査を通じて他の病気を除外した後、犬の場合はFavrotの診断基準（年齢や発症部位などによる基準）に当てはめて、どの程度合致しているかを確認する必要があります。
猫の場合は犬よりも情報が少なく、明確な基準も定まっていないため、診断がより難しくなります。
アトピー性皮膚炎が疑わしい場合は、外部の検査機関にアレルギー検査を依頼して、どのアレルゲンが原因になっているのかを調査します。
あるいは、皮内反応試験（皮膚にアレルゲンを注射して反応を調べる検査）を実施することもあります。
４．治療
当院では様々な方法を用いて皮膚の状態を改善し、症状が悪化しにくくなるようなベースづくりを大切にしています。
基本的にはステロイド、または免疫抑制剤でコントロールすることが多い病気ですが、当院では外用薬（塗り薬）の細かなコントロールやご家庭でのケアを組み合わせることで、内服薬の用量を少なくしても炎症が現れにくくなるような体づくりを心がけています。
さらに、漢方による治療を並行することで症状の改善につながることもあります。漢方を取り入れることで、西洋医学の薬の使用量を減らしつつ、治療の成果を最大化し、愛犬・愛猫への負担をできるだけ減らすことができます。
漢方によって体質を改善することで再発防止にもつなげていくため、ご希望があればぜひご相談ください。
また、内服が難しい場合は、抗体医薬（サイトポイントという注射薬）を用いて、かゆみによるQOLの低下を緩和するという選択肢もあります。
上記の治療方法を組み合わせて、その子に合わせた最適な治療方法をご提案させていただきますので、些細なことでもご相談ください。
５．予防法やご家庭での注意点
アトピー性皮膚炎はアレルゲンに対する免疫反応が原因で発症するため、飼育環境からアレルゲンをできるだけ排除することが大切です。
こまめに掃除を行い、お部屋を清潔に保つことはもちろん、空気清浄機などを使用して空気をきれいにすることで、ハウスダストなどのアレルゲンを取り除くことができます。
６．まとめ
アトピー性皮膚炎は、アレルゲンに反応して強いかゆみを引き起こす病気です。治療には時間がかかることもありますが、当院では愛犬・愛猫への負担を極力減らすため、外用薬や漢方を組み合わせ、なるべく内服薬だけに頼らない治療を心がけています。
ご家庭での対策もかゆみの軽減につながるので、今回の記事を参考に実践してみてください。
愛犬や愛猫の健康と幸せのために私たちが全力でサポートいたしますので、何かご不明な点やお困りのことがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
■皮膚のかゆみに関連する記事はこちらから
・犬と猫のノミアレルギー性皮膚炎について｜痒みと炎症の正体とは？
にゅうた動物病院｜相模原市 相模大野・東林間の動物病院
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＜参考文献＞
Canine atopic dermatitis: detailed guidelines for diagnosis and allergen identification - PMC (nih.gov)
Treatment of canine atopic dermatitis: 2015 updated guidelines from the International Committee on Allergic Diseases of Animals (ICADA) - PMC (nih.gov)
Atopic dermatitis in cats - PMC (nih.gov)
