獣医師が本音で答える|猫の去勢手術は本当にかわいそう?愛猫家の不安を解消
去勢手術には多くのメリットがありますが、元気な猫に手術を受けさせることに抵抗を感じ、「かわいそう…」と感じる飼い主様のお気持ちも、よく理解できます。
当院では、これまで多くの猫を診療してきた経験から、去勢手術は猫が健やかに暮らすための大切な予防医療のひとつと考えています。
そこで今回は、去勢手術を受けないことで猫に起こりうるリスクや、手術が猫だけではなく、ご家族にとってもどのようなメリットをもたらすのかについて、詳しくお伝えします。
■目次
1.猫の「本能」が引き起こすストレスと危険
2.去勢手術で叶える、穏やかで健康な暮らし
3.去勢手術に対する誤解と事実
4.手術の実際:安全性と配慮について
5.去勢手術のベストなタイミング
6.さいごに
1.猫の「本能」が引き起こすストレスと危険
そもそも去勢手術は、猫の本能によるストレスを和らげ、身体的・精神的に健康に過ごせるようにするためのものです。
オスの猫はもともと縄張り意識が強く、マーキングや徘徊、ケンカといった行動をとることがあります。これは本能的なもので、猫自身も無意識のうちに行っています。
しかし、こうした行動は精神的な負担が大きいだけでなく、ケガや事故のリスクも伴います。例えば、縄張りを広げようと外に出てしまい、交通事故に遭ったり、ほかの猫とケンカをしてケガをしたりすることもあります。
また、マーキングは本能的な行動なので、「ダメ!」と叱っても猫には伝わりません。それどころか、叱られることでストレスを感じ、問題行動が悪化してしまうこともあります。
去勢手術は、こうした本能によるストレスや危険を最小限に抑え、猫がより穏やかに過ごせるようにするための方法なのです。
2.去勢手術で叶える、穏やかで健康な暮らし
去勢手術にはいくつかのメリットがありますが、その中でも特に重要なのがストレスの緩和です。
先ほどお伝えしたように、本能が引き起こす行動は、猫にとって大きな精神的ストレスの原因となります。ストレスが続くと、体調を崩したり、QOL(生活の質)が低下したりすることもあります。
また、去勢手術は猫だけでなく、飼い主様の暮らしにも良い影響を与えます。
マーキングや徘徊といった行動は日常の悩みの種になりやすいものですが、去勢手術によってこうした行動が減ることで、飼い主様がストレスなく愛猫と過ごすことにもつながります。
さらに、去勢手術は精巣腫瘍などオス猫特有の病気の予防にも効果があります。加えて、外でのケンカが減ることで、猫風邪や猫白血病などの感染症にかかる可能性も下がります。
3.去勢手術に対する誤解と事実
去勢手術について、よくある誤解のひとつに「性格が変わる」「オスらしさがなくなる」といった意見があります。
確かに、去勢手術で取り除く精巣はテストステロン(性ホルモン)を分泌しているため、術後は攻撃性が和らぎ、以前とは違う印象を受けることがあるかもしれません。
しかし、猫の性格はもともとの気質や生活環境による影響が大きいため、手術によって極端に変わることは考えにくいでしょう。
大切なのは、術後も変わらない愛猫の個性を受け入れ、これまでと変わらず愛情をもって接することです。去勢手術を行うことで、ある意味で「新しい生活」「新しい幸せ」が始まります。
愛猫とご家族がストレスなく健康に過ごせるのは、去勢手術という予防医療の大きなメリットのひとつです。
4.手術の実際:安全性と配慮について
「手術」と聞くと、安全性が気になり、ご不安に思われる飼い主様も多いかと思います。ですが、現在の獣医療は大きく進歩しており、動物への負担をできるだけ軽減しながら、安全に手術を行う技術が確立されています。
また、去勢手術は比較的短時間で終わる手術です。一般的には15分ほどで完了し、術後の回復も早いため、数日以内に普段の生活に戻れることがほとんどです。
特に若い猫は回復力が高く、手術の翌日には元気に動き回ることも珍しくありません。中には、飼い主様に会えた喜びから、手術翌日には走り回っている子もいるほどです。
5.去勢手術のベストなタイミング
猫の健康維持と問題行動の予防を目的に、生後6か月頃からの去勢手術が推奨されています。ただし、成長のスピードやマーキングの有無、体格によって適した時期は異なるため、手術前に身体検査を行い、最適なタイミングを判断することが大切です。
1歳を過ぎても去勢手術は可能ですが、マーキングが定着すると手術後も続くことがあります。また、外に出る猫は縄張り争いによるケンカや感染症(猫白血病ウイルス・猫エイズなど)のリスクが高まるため、できるだけ早めの手術が理想的です。
「いつ去勢手術を受けるのがベスト?」「今からでも間に合う?」といった疑問があれば、ぜひお気軽にご相談ください。
6.さいごに
去勢手術は少なからず猫の体を傷つけるので、「かわいそう」と感じる飼い主様もいらっしゃいます。ですが、オス猫には本能によるストレスやリスクがあり、手術を受けないことでかえって健康を損なってしまうこともあります。
去勢手術は、最低限の負担で猫がより穏やかに、健康的に暮らせるようにするための選択肢のひとつです。愛猫がストレスなく過ごせる未来のために、健康なうちに手術を受けることを検討してみてはいかがでしょうか。
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