にゅうた動物病院コラム

犬の胆汁と胆石について|健康診断で偶然見つかることが多い?

犬の胆汁と胆石について|健康診断で偶然見つかることが多い?

犬の腹部のエコー検査をした際、まれに見つかることがあるのが「胆石(たんせき)」です。これは、胆汁(たんじゅう)という消化液が固まって石のようになったもので、胆嚢炎や胆管閉塞といった病気に繋がることがあります。

治療方法はさまざまで、症状の有無や石の大きさに応じて、愛犬に合った最適な治療法を選ぶことが大切です。

今回は、犬の胆汁や胆石についての基礎知識とともに、当院で行っている診断・治療法や、ご家庭で気をつけるポイントなどをご紹介いたします

■目次
1.胆汁と胆石とは
2.よく見られる症状
3.原因
4.診断
5.治療
6.日常の注意点と予防
7.おわりに

 

1.胆汁と胆石とは


胆汁は、肝臓でつくられる消化液で、胆嚢(たんのう)という臓器に蓄えられています。正常な胆汁は、さらさらとした緑色の液体で、脂肪の消化を手助けするために、必要に応じて胆嚢から腸に送られます。

胆石とは、胆嚢の中でできる結石のことで、胆汁が濃縮されることで形成されます。成分によって、コレステロール胆石、ビリルビン胆石、混合胆石の3つに分けられますが、犬ではほとんどがビリルビン胆石です。
発生頻度はそれほど高くなく、イギリスの動物病院での報告によると、犬の約0.97%に確認されたとされています。
また、シェットランド・シープドッグやコッカー・スパニエルといった犬種は胆石ができやすいとされ、特に中高齢の犬では注意が必要です。

 

2.よく見られる症状


初期の段階では、食欲が落ち、嘔吐や軽い腹痛といった症状が見られることがあります。ただし、こうした症状がまったく出ないことも多く、健康診断の際に偶然見つかることも珍しくありません。
病気が進行すると、黄疸(皮膚や目の白い部分が黄色くなる)、強い腹痛、発熱などの症状が現れ、ぐったりとして元気がなくなることもあります。

さらに症状が悪化すると、胆嚢に炎症が起きる「胆嚢炎」や、胆嚢と腸をつなぐ総胆管が詰まる「胆管閉塞」を引き起こし、最悪の場合は胆嚢が破裂することもあります。
このような場合、黄疸や腹痛がさらにひどくなり、特に胆嚢破裂は緊急性が高く、腹膜炎を引き起こし、発熱やぐったりとして動けなくなることもあります。

胆汁は刺激性が強いため、破裂してお腹の中に広がると激しい腹痛を伴います。この状態は命に関わる非常に危険なものなので、早急な対応が必要です。

 

3.原因


胆石は、胆汁が濃くなったり、胆嚢の中で停滞したりすることで発生します。それ以外にも、以下の要因が関係すると考えられています。

・遺伝:特定の犬種がかかりやすいと言われています。
・ホルモンの病気:甲状腺機能低下症など、ホルモンの異常が影響することがあります。
・食事:高脂肪や高コレステロールの食事、または特定の栄養素が不足している場合もリスクとなります。
・その他のリスク要因:肥満や慢性的な肝臓、胆嚢の病気も影響を与える可能性があります。

 

4.診断


胆石の診断には、血液検査と超音波検査が特に重要です。血液検査では、肝機能の状態や胆道系の酵素を確認し、体内での異常を調べます。
また、超音波検査に加えてX線検査を行うことも多く、さらに詳しく調べるためにCTやMRI検査を追加することもあります。
必要に応じて、胆汁の検査もご提案し、より正確な診断を行います。

 

5.治療


胆石の治療は、内科的治療と外科的治療に分かれます。

<内科的治療>

胆石を溶かすお薬や、感染がある場合は抗生物質を使用します。さらに、低脂肪・低コレステロールの食事による治療(食事療法)を取り入れることもあります。
症状がない、または軽度の場合には、こうした内科的な治療をご提案しています。

 

<外科的治療(胆嚢摘出術)>

症状が進行し、重度の腹痛や黄疸が見られる場合には、胆嚢摘出術が必要になることがあります。特に胆嚢破裂のリスクがある場合、早急な対応が必要です。
手術後は数日間の入院が必要となりますが、適切な管理とケアにより、術後の回復も期待できます。

当院では胆嚢摘出術の実績があり、手術による対応も可能です。症状が重くなる前に、適切な治療を行うことが重要ですので、気になることがあればいつでもご相談ください。

 

6.日常の注意点と予防


胆石は初期には症状が出にくく、重症化してから気づくことが多いため、早期発見と治療には定期的な健康診断が大切です。
また、ご家庭での適切な食事管理も予防の重要なポイントです。具体的には、低脂肪・低コレステロールの食事や、栄養バランスのとれた食事が推奨されます。さらに、適度な運動で肥満を防ぐことも大切です。

胆石症は、消化器系に影響を与えることが多いため、嘔吐や食欲不振といった症状が見られた場合は、早めに動物病院を受診しましょう。

 

7.おわりに


胆汁は、食事の消化を助ける大切な消化液です。しかし、胆汁が固まって胆石になると、胆嚢破裂や胆管閉塞といった命に関わる病気に繋がるリスクがあります。そのため、早期発見と早期治療がとても重要です。日頃から、低脂肪・低コレステロールの食事や適度な運動を心がけ、定期的に健康診断を受けることで、愛犬が健康に過ごせる時間をより長くしていきましょう。

もし、愛犬に関して気になることやご不安があれば、いつでもお気軽にご来院ください。私たちスタッフが一緒に考え、愛犬の健康をしっかりと支えていきます。
定期健診や日々のケアを通じて、安心して愛犬と過ごせる毎日をサポートいたします。

 

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にゅうた動物病院|相模原市 相模大野・東林間の動物病院
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<参考文献>

Cholelithiasis in the Dog: Prevalence, Clinical Presentation, and Outcome | Journal of the American Animal Hospital Association (allenpress.com)

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