にゅうた動物病院コラム

シニア期の犬や猫の健康管理|定期健診でできる予防と早期発見の重要性

シニア期の犬や猫の健康管理|定期健診でできる予防と早期発見の重要性

近年、犬や猫にも予防医療の重要性が浸透しつつあり、病気を「治す」のではなく、「病気にさせない」ことが重視されています。特にシニア期に入った犬や猫にとっては、定期的な健康診断が非常に重要です。
健康診断を通じて病気を早期発見・早期治療できれば、愛犬や愛猫の健康寿命を延ばすことができ、結果として治療費の負担も軽減できるでしょう。

今回は、当院で行っているシニア期の犬・猫向け定期健康診断について、内容やその重要性をご紹介します。


■目次
1.なぜシニア期には定期健康診断が必要なの?
2.定期健康診断で予防できる病気や早期発見できる症状
3.シニア期の健康診断で行う検査項目
4.健康診断の頻度と適切な時期
5.健康診断の費用の目安
6.健康診断当日の注意点
7.まとめ|愛する家族の健康を守るために

 

1、なぜシニア期には定期健康診断が必要なの?


まずは定期健康診断が必要な理由からご説明していきます。
年齢や犬・猫の種類に関わらず、身体に何らかの病気や異常が発生した場合、早期に対応することで治療の選択肢が増え、重大な問題に発展する前に解決できる可能性が高まります。

特に犬や猫は人間のように痛みや不調を言葉で伝えることができないため、飼い主様が日頃から気を付けていても、見逃してしまうことがあるのです。定期的な健康診断を受けて早期に異常を発見し対処することが、愛犬や愛猫の長寿のカギと言えるでしょう。

また、加齢とともに腎臓や心臓、関節などに負担がかかり、さまざまな病気が起こりやすくなります。そのため、特にシニア期に入った犬や猫では、健康診断の重要性が一層高まります。

 

2、定期健康診断で予防できる病気や早期発見できる症状


定期健康診断は、以下のような病気の予防や症状の早期発見につながります。

<予防や進行抑制につながる病気>

歯周病
歯周病は、口腔ケアが不足すると進行し、歯の痛みや感染症を引き起こす可能性があります。さらに進行すると、体内の炎症が内臓にも影響を及ぼすことがあります。
定期的に口腔内の状態をチェックし、必要に応じて歯石除去や適切な歯磨き方法を実践することで、歯周病の予防や進行を抑えることができます。

高齢犬の歯周病についてはこちらで解説しています

 

肥満
年齢とともに代謝が低下し、肥満になりやすくなります。肥満は糖尿病、関節疾患、心臓病などさまざまな病気のリスクを高めるため、注意が必要です。
定期健康診断で体重や体脂肪率をチェックし、生活習慣を見直すことが大切です。

 

関節疾患(関節炎など)
高齢になると、関節に負担がかかることで炎症や痛みが発生しやすくなります。特に大型犬や高齢猫では注意が必要です。関節の異常は放置すると日常生活に支障をきたす場合もあります。
定期的な診察で関節の動きや歩行状態を確認することで、早めにサプリメントや運動量の調整を行うことが可能です。

猫の変形性関節症についてはこちらで解説しています

 

腎臓病
シニア期の犬や猫に多い「慢性腎臓病」は、腎臓の機能が徐々に低下していく病気です。初期段階では目立った症状が現れにくいため、気づかないうちに進行してしまうことがあります。
ただし、血液検査や尿検査を定期的に受けることで早期発見が可能です。
腎臓に負担をかけない食事療法や適切な治療を早めに始めることで、進行を抑えたり生活の質を保つことができます。

 

心臓病
心臓病も、シニア期の犬や猫でよく見られる病気です。加齢により心臓の機能が弱くなり、僧帽弁閉鎖不全症や肥大型心筋症などが進行することがあります。
初期段階では症状が目立ちにくいものの、聴診やレントゲン、心臓エコーなどの検査で早期発見が可能です。
異常が見つかった場合は、薬を使った治療や生活環境の管理によって、症状を抑えたり進行を遅らせたりすることができます。

犬の僧帽弁閉鎖不全症についてはこちらで解説しています
猫の肥大型心筋症についてはこちらで解説しています

 

<早期発見につながるサイン>

視力の低下
年齢を重ねると目の健康状態が変化し、視力が低下することがあります。この視力の変化は、白内障や緑内障など目の病気の初期サインである場合もあります。定期的に健康診断を受けて目の状態を確認することで、早期発見や適切な治療につなげることができます。

 

ふらつき
ふらつきは、関節の問題や神経系の異常が原因であることが多いです。放置すると症状が悪化する場合があるため、早期に発見して適切なケアや治療を受けることが重要です。

 

呼吸の異常
呼吸が速い、浅い、不規則、または呼吸音に異常がある場合、心臓や肺に病気が隠れていることがあります。これらの異常は特に見逃しやすいサインなので、定期的な検診でチェックすることが大切です。

気管虚脱についてはこちらで解説しています

 

皮膚のしこり
皮膚にできるしこりは、良性のものもあれば悪性の腫瘍であることもあります。触診や検査を通じて早期に診断を受けることで、適切な治療や対処が可能になります。

皮膚のできものについてはこちらで解説しています

 

3、シニア期の健康診断で行う検査項目


当院では、シニア期に入った愛犬や愛猫の健康状態を把握するため、以下のような基本的な検査を行っています。

<基本検査>

・身体検査
犬や猫に直接触れ、視覚や聴覚、触覚など五感を使って全身の状態を確認します。
皮膚にしこりがないか、心臓や肺の音に異常がないか、歩き方に問題がないかなど、さまざまな点を細かくチェックします。

・血液検査
血液検査は「血球計算(CBC)」と「生化学検査」に分かれ、全身の健康状態を把握します。
貧血や炎症の有無、内臓の機能、ミネラルバランスの異常などがわかり、シニア期に起こりやすいさまざまな病気の早期発見に役立ちます。

・画像検査(レントゲン、超音波)
胸部腹部の様子を観察することで、内臓や骨、関節の状態を確認します。
心臓や気管支、肺の病気、肝臓や腎臓、消化器の問題、骨や関節の異常など、シニア期に多い病気の兆候を見逃さないようにします。

 

<オプション検査>

・ホルモン検査
年齢とともに増加するホルモンの病気を早期に発見するために、ホルモンの値を調べます。
高齢の犬や猫でホルモンバランスが崩れることが多く、特に体調に変化がある場合はおすすめです。

・尿検査
尿の色や成分を調べることで、尿路や腎臓の状態がわかります。糖や結晶、細胞成分の異常などが見つかり、頻尿や尿量の変化があれば病気の兆候かもしれませんので、一度確認しておくと安心です。

・便検査
便の状態や色、寄生虫の有無などを調べます。特に保護された猫新たに飼い始めた犬や猫では、寄生虫がいることが多いので、定期的に確認することをおすすめします。

 

4、健康診断の頻度と適切な時期


当院では、犬や猫の年齢や健康状態に応じて、以下の頻度で健康診断をおすすめしています。

8歳未満で持病がなく健康状態が良好な場合:年1回
8歳以上、または持病がある場合:年2回
健康状態がよくない場合:随時

ただし、シニア期の始まりは犬や猫の品種や個体差によって異なるため、最適な時期についてはかかりつけの獣医師にご相談いただくのが確実です。

また、いつもと様子が違うと感じた場合は、次の定期健診を待たずに早めの受診をおすすめします。特に季節の変わり目は体調を崩しやすく、湿度や急な寒暖差が体に負担をかけることもありますので、気温の変化が大きい時期には一層の注意が必要です。

 

5、健康診断の費用の目安


当院で実施している健康診断の費用は、以下の通りです。

腹部画像検査セット(腹部レントゲン2枚+腹部超音波検査):14,300円(税込)
心臓画像検査セット(胸部レントゲン2枚+胸部超音波検査):14,300円(税込)
全身画像検査セット(腹部画像検査セット+心臓画像検査セット):25,300円(税込)
健康診断血液検査(犬:CBC+19項目): 5,500円(税込)
健康診断血液検査(猫:CBC+20項目):6,050円(税込)

※ホルモン検査、尿検査、便検査はオプション検査となります。

詳しくは下記のページもご参照ください。
https://nyuta-ahp.com/health-check/

愛犬や愛猫の健康をしっかり見守るために、ぜひ定期的な健康診断をご検討ください。

 

6、健康診断当日の注意点


健康診断当日は、以下の点にご注意ください。

<食事について>

当日の朝ごはんは抜いていただき、ご来院ください。お水は普段通りに与えても問題ありません。

 

<検査時間について>

検査の所要時間は、実施する項目によって異なります。身体検査や血液検査のみの場合は約15分、画像検査も含む場合は約30分ほどかかります。

 

<犬や猫のストレス対策>

動物病院は犬や猫にとってストレスを感じやすい場所です。少しでも安心できるように、以下のような工夫をおすすめします。

・いつも使っているタオルやお気に入りのアイテムをクレートに入れる
・クレートの上に毛布をかけて外からの視界を遮る
・待ち時間がある場合、車内や駐車場で過ごして落ち着ける場所を確保する

また、性格的にどうしても興奮してしまう場合があります。そのようなときは、通院前にお薬を飲んでから受診する「通院前投薬」が選択肢のひとつになることもあります。
診察の度に感じるストレスで体調を崩してしまわないよう、こうした方法を取り入れることで少しでも負担を軽くすることができます。

「連れて行くのが大変」というお悩みを抱える飼い主様もいらっしゃると思いますが、まずはお気軽にお話だけでもお聞かせください。私たちは、愛犬や愛猫が安心して診察を受けられるよう、飼い主様と一緒にその方法を考えていきたいと思っています。

 

まとめ|愛する家族の健康を守るために


定期健康診断は、シニア期の愛犬や愛猫が健康に過ごすために欠かせないものです。病気が進行してからの治療は体への負担が大きく、治療も難しくなることが少なくありません。しかし、健康な状態で病気の芽を早期に見つけることで、犬や猫への負担を減らし、健康寿命を延ばすことが期待できます。

また、かかりつけの獣医師との信頼関係を築いておくと、日々の様子や気になることを気軽に相談でき、適切なケアがしやすくなります。愛する家族の健康を守るため、日頃からのケアと定期健診を大切にしていきましょう。

 

■健康診断についてはこちらでも解説しています
定期的な健康診断①
定期的な健康診断②「身体検査について」
定期的な健康診断③「血液検査について」
定期的な健康診断④画像検査(レントゲン検査・エコー検査)

 

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