にゅうた動物病院コラム

小型犬に多い「気管虚脱」ってどんな病気?|咳や息苦しさの原因と対処法を解説

小型犬に多い「気管虚脱」ってどんな病気?|咳や息苦しさの原因と対処法を解説

愛犬の「ガーガー」という苦しそうな咳や、運動中に突然咳き込むような様子を見て不安になったことはありませんか?
そのような咳は、もしかすると「気管虚脱(きかんきょだつ)」という病気が原因かもしれません。

気管虚脱は、特に小型犬に多く見られる呼吸器の病気で、気管(空気の通り道)が押しつぶされることで呼吸がしづらくなる状態です。
進行すると咳が止まらなくなり、酸素不足から失神してしまうこともあるため、早めの気づきと適切な対応が大切です。

今回は、気管虚脱の主な原因や症状、治療法、そして日常生活でできるケアについて、解説します。

■目次
1.よく見られる症状
2.原因
3.診断方法
4.治療法
5.日常生活での注意点と予防
6.おわりに

 

1.よく見られる症状


気管虚脱は、気管(空気の通り道)が押しつぶされてしまうことで、呼吸がしづらくなり、さまざまな症状が現れる病気です。
初期のうちは「たまに咳をするだけ」で済んでいても、少しずつ呼吸がつらそうになったり、咳の頻度が増えたりすることもあります。

以下のような様子が見られたら、注意が必要です。

ガーガーという苦しそうな咳が出る
興奮したときや運動のあとに咳き込む
咳のあとに吐き気があるようなそぶりを見せる
呼吸が荒く、しばらく落ち着かない
歯ぐきや舌の色が青紫〜灰色っぽく変化している(チアノーゼ)
ぐったりして失神することがある

これらの症状が見られた場合は、なるべく早めに動物病院を受診しましょう。

 

2.原因


気管虚脱は、ひとつの原因で起こるというよりも、いくつかの要因が重なって発症すると考えられています。

 

<遺伝的な素因>
最もよく知られているのが、遺伝的な体質による影響です。
この病気は、小型犬種に多く見られる傾向があり、特に以下の犬種で発症しやすいとされています。

・チワワ
・ヨークシャー・テリア
・ポメラニアン
・シー・ズー など

 

<その他の影響>
気管への負担を増やす要因として、以下のようなことも関係しています。

肥満:体重が増えることで、気管や呼吸器に余計な圧力がかかります。
加齢:年齢とともに、気管の弾力や強度が低下します。
慢性的な呼吸器疾患(気管支炎・肺炎など):炎症の刺激が続くことで気管の構造が弱くなる場合があります。
興奮しやすい性格や、首輪で強く引っ張るお散歩の習慣:これらも気管への刺激となり、症状を悪化させる要因になります。

このように、気管虚脱は「体質」と「生活環境」の両面から影響を受ける病気です。
だからこそ、予防や進行の抑制には日常生活の見直しと、愛犬の個性に合ったケアがとても大切になります。

 

3.診断方法


愛犬の咳の原因が本当に気管虚脱によるものかどうかを判断するためには、しっかりと検査を行うことが大切です。
咳の症状はさまざまな病気で見られるため、正しい診断が治療への第一歩となります。
当院では、以下のような検査を組み合わせて、愛犬の状態を総合的に確認しています。

 

レントゲン検査
呼吸のタイミングに合わせて胸部のレントゲンを撮影し、気管のつぶれ具合や変形の程度を確認します。
また、心臓の大きさや肺の状態など、他の臓器の様子も合わせて評価します。

 

気管支鏡検査
麻酔をかけたうえで、細いカメラを使って気管の内部を直接観察する検査です。
より詳しく、気管の形や動き、炎症の有無などを確認できるため、診断の精度が高まります。
なお、当院ではこの検査は実施しておりませんが、必要に応じて対応可能な専門施設をご紹介いたします。

咳の原因は気管虚脱に限らず、心臓の病気や腫瘍、慢性気管支炎など他の病気が関係している場合もあります。
そのため、一つの検査結果だけで判断せず、複数の情報をもとに総合的に診ていくことが重要です。

 

4.治療法


気管虚脱は、完全に治すことが難しい病気ではありますが、「今より悪化させないこと」や「できるだけ呼吸を楽にしてあげること」を目指して治療を行っていきます。

当院では、まずは内科的な治療を中心に進めていくことが一般的です。
以下のようなお薬やケアを組み合わせて、症状の緩和と生活の質の維持を目指します。

咳止めや去痰剤:咳の頻度や強さを和らげるために使用します。

抗生物質:感染が疑われる場合に投与します。

抗炎症薬(ステロイドなど):気道の炎症が強い場合に、必要に応じて使用します。

ネブライザー(吸入治療):細かい霧状の薬剤を吸入させて、気道をやさしく潤し、呼吸を楽にします。

内科的な治療でのコントロールが難しい重症例では、気管にステントを入れる手術などの外科的治療を検討することもあります。
そのような場合には、専門病院と連携し、手術や精密検査が受けられるようご紹介も可能です。
治療の選択肢については、ご不安なことやご希望をうかがいながら、丁寧にご相談させていただきます。

 

5.日常生活での注意点と予防


気管虚脱は体質が関わる病気ではありますが、日々のちょっとした工夫で症状を和らげたり、悪化を防いだりすることができます。
無理のない範囲で、できることから取り入れてみましょう。

 

首輪ではなくハーネスを使用する
首輪で気管が圧迫されるのを防ぐために、お散歩の際はやさしく体を支えられるハーネスがおすすめです。

 

興奮をできるだけ避ける
インターホンの音や来客など、急な刺激は咳を誘発する原因になることもあります。静かな環境づくりを意識してみてください。

 

散歩ルートを工夫する
他の犬とのすれ違いで興奮してしまう場合は、時間帯やルートをずらして、落ち着いた環境でお散歩ができるようにしましょう。

 

体重管理をしっかりと
太りすぎは気管への負担につながります。適度な運動とバランスのとれた食事で、適正体重を維持しましょう。

 

気管虚脱は完全に防ぐことが難しい場合もありますが、日常の積み重ねでコントロールしやすくなる病気です。
愛犬の個性に合わせて、できる範囲でストレスや負担を減らす工夫を続けていくことが大切です。

 

6.おわりに


「咳が増えてきたかも」「最近、呼吸が少し苦しそう」
そんな小さな変化に気づいたとき、気管虚脱が原因のひとつである可能性も考えられます。

当院では今の症状だけにとどまらず、愛犬とご家族がこれからも安心して過ごせるようなサポートを心がけています。
治療にあたっては、それぞれの生活スタイルや愛犬の性格に合わせたご提案を大切にしています。

もしご不安なことがありましたら、どんな些細なことでも構いませんので、どうぞお気軽にご相談ください。
私たちは、飼い主様と一緒に愛犬の健康を支えていきたいと考えています。

 

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