犬と猫の血小板減少症について|血が止まりにくくなる病気
血小板とは血液の中に存在する成分の1つで、出血を止める役割を担っています。血小板減少症は、何らかの理由によって血小板が少なくなることで、身体のいろいろな部位で血が止まりにくくなる病気です。
猫ではほとんど知られていませんが、犬では免疫介在性で起こることがあり、出血が続くと死に至る危険性もあります。そのため、健康診断などで定期的に状態をチェックし、早期発見・早期治療に努めることがとても大切です。
今回は犬と猫の血小板減少症について、よく見られる症状やその原因とともに、当院での治療法をお伝えします。
■目次
1.よく見られる症状
2.原因
3.診断について
4.治療について
5.日常での注意点や予防
6.最後に
1.よく見られる症状
よく見られる症状として、皮膚のあざや粘膜の点状出血といわれる内出血が挙げられます。これらの症状はおなかや脇、股などの皮膚が薄い部分や、歯茎の粘膜に現れることが多い傾向にあります。
特に皮膚の症状は見た目からも分かりやすく、トリミング中に偶然あざができている様子を発見し、病気が判明することも多々あります。
当院のトリミングについてはこちらからご案内しています
その他にも、鼻血が出る、元気や食欲がない、嘔吐、血尿、血便、怪我をして出血がなかなか止まらないなどのケースもあります。一方で、症状に気づかないまま健康診断検査時に偶然見つかることもあります。
2.原因
犬と猫の血小板減少症は、その原因によって続発性と免疫介在性に分かれます。
続発性の場合は、腫瘍や感染症、薬剤などの影響によるものですが、発生はそこまで多くありません。
犬では特に免疫介在性で起こることが多く、異物を排除するための免疫機能が誤って自分の細胞(血小板減少症の場合は血小板)を攻撃してしまうことで、血小板の数が極端に減ってしまいます。
オス犬よりもメス犬での発症が多く、コッカー・スパニエルやトイ・プードルなどの犬種でよく見られることが知られています。
3.診断について
皮膚のあざや歯茎の出血などが見られる場合は血小板減少症を疑って、血液検査を行うとともに、血液塗抹標本(少量の血液を薄くシート状に伸ばしたもの)を作製します。
血液検査では血小板の数値を、血液塗抹標本では顕微鏡で細胞の種類や形態を確認します。その他にも、続発性血小板減少症やその他の原因を排除することによって、診断に結び付けます。
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4.治療について
自分の免疫が病気の発生に関わっているので、主に最初はステロイドが使われ、状況によってはそれと並行して他の免疫抑制剤が使用されます。軽症であれば入院せずお薬を投与して治療を始めます。
ただし、ステロイドを長期投与すると副作用が出ますので、徐々に減らしていけるように定期的に通院して血小板数を確認しながら、ステロイドの量を調整していきます。
一方で、重症の場合は入院していただき、お薬による治療と合わせて集中治療や輸血が必要になるケースもあります。特に免疫介在性血小板減少症は、同じような原因で免疫介在性溶血性貧血(自分の免疫が赤血球を攻撃してしまう病気)を同時に発症してしまうことも多く、そうした場合も緊急の対応が必要になります。
溶血性貧血についてはこちらで解説しています
また、これらの処置によって状態が回復してくれば、徐々にお薬の量や種類を減らしていくことができる場合も多くあります。
5.日常での注意点や予防
残念ながら、血小板減少症のはっきりした予防方法は存在しません。しかし、健康診断やトリミングなどで動物病院を定期的に受診していただくことで、症状が軽いうちに数値の異常やあざなどを発見できれば、より負担が少ない治療で大切な命を守れる可能性があります。
ただし、症状が良くなったからといって飼い主様の判断でお薬をやめてしまうと、再発してしまい、さらに今度はお薬に反応しなくなる可能性もあります。そのため、定期的な診察と血液検査、治療をしっかりと続け、困ったことやおかしいと思うことがあればすぐに獣医師にご相談ください。
6.最後に
血小板減少症は亡くなってしまう可能性がある危険な病気ですが、早期に発見して適切な治療に反応があれば、お薬でコントロールすることもできます。皮膚や粘膜にあざや出血が続くようであれば、すぐにご来院ください。
当院が目指すのは、皆さまの愛犬、愛猫が健康で充実した生活を送れるよう、しっかりと支えられる病院です。日々の健康管理から病気の早期発見、予防に至るまで、一貫して一人ひとりに合わせたケアを提供するように心がけておりますので、小さな疑問や心配もぜひご相談ください。
にゅうた動物病院|相模原市 相模大野・東林間の動物病院
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