犬の心雑音とは?病気と決めつける前に、まずは精密検査を
健康診断の際などに「心雑音があります」と言われると、不安を感じる飼い主様も多いかもしれません。
心雑音は、必ずしも病気の確定診断ではありませんが、心臓の異常を知らせる大切なサインである場合があります。
今回は、犬の心雑音について、考えられる原因や関連する病気、検査内容、費用の目安をご紹介します。
■目次
1. 心雑音とは何か?
2. 心雑音があると診断されたら
3. 心雑音から考えられる主な心臓病
4. 心臓病の検査内容
5. 検査費用の目安(2025年6月時点)
6. おわりに|早期発見と定期健診のすすめ
1. 心雑音とは何か?
犬の心雑音とは、本来は聞こえないはずの異常な音が、心臓の拍動に合わせて聴診器で聞こえる状態のことをいいます。これは多くの場合、心臓の弁や筋肉の動き、血液の流れに乱れがあるときに発生します。
音の出方や場所、強さにはさまざまなパターンがあり、それらを手がかりに心臓にどのような異常があるかを見つけていきます。
音の大きさは「Levine分類」という6段階で表され、数字が大きいほど、より強く音が聞こえる状態です。グレードが高くなるほど、重症度が高い傾向にあり、注意して様子を見る必要があります。
2. 心雑音があると診断されたら
健康診断やワクチン接種時の聴診で「心雑音がありますね」と言われたら、次に大切なのは、その雑音がどんなタイプなのかを詳しく確認することです。
たとえば…
・どこで聞こえるか(心臓の左右、前後など)
・いつ聞こえるか(心臓の収縮時か、拡張時か)
・どのくらいの大きさか(Levine分類での段階)
これらの情報を組み合わせることで「心臓のどこに問題がありそうか」「その雑音が注意すべきものかどうか」の見当をつけます。そのうえで、必要に応じてより詳しい検査を行い、心臓の状態をしっかりと調べていきます。
3. 心雑音から考えられる主な心臓病
犬で心雑音が聞こえる場合、心臓や血管に何らかの異常があるおそれがあります。ここでは、よくみられる代表的な病気をいくつかご紹介します。
◆僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべんへいさふぜんしょう)
小型犬に多くみられる心臓の病気です。心臓の左側にある「僧帽弁」がうまく閉じなくなり、血液が逆流してしまうことで雑音が聞こえるようになります。
チワワやキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルなどの犬種は特に注意が必要で、年齢とともにリスクも高くなります。
◆三尖弁閉鎖不全症(さんせんべんへいさふぜんしょう)
心臓の右側にある弁がうまく閉じなくなる病気です。お腹に水(腹水)がたまることもあり、僧帽弁閉鎖不全症と同時に見つかることもあります。
◆拡張型心筋症(かくちょうがたしんきんしょう)
心臓の筋肉が弱くなり、心臓がふくらんだままの状態になります。ドーベルマンやボクサーなどの大型犬によくみられます。
◆動脈管開存症(どうみゃくかんかいぞんしょう/PDA)
本来は出生後に閉じるはずの血管(動脈管)が閉じずに残ってしまう先天性の病気です。
トイ・プードルやマルチーズなどで比較的多く「ザーッ」という雑音が収縮期から拡張期まで続いて聞こえるのが特徴です。
これらの病気は、初期のうちは特に症状が出ないこともありますが、進行してくると以下のような変化がみられることがあります。
・咳が増える
・呼吸が荒くなる
・散歩を嫌がる・すぐに疲れる
・食欲が落ちる
日常のちょっとした変化に早めに気づくことが、病気の進行を防ぐ第一歩になります。
4. 心臓病の検査内容
心雑音が何から来ているのかを調べ、必要な治療を判断するためには、以下のような検査を行います。
・聴診:雑音の有無や性質を確認
・血圧測定:高血圧がないかをチェック
・血液検査:体全体の状態や心臓に関連する指標(バイオマーカー)を確認
・心電図検査:不整脈があるかを確認
・レントゲン検査:心臓の大きさや肺の状態を確認
・心エコー検査(超音波検査):心臓の動きや血液の流れをリアルタイムで詳しく観察
当院では、日本獣医画像診断学会所属の獣医師が在籍しており、画像診断の専門的な知識と技術を活かして、精度の高い診療を提供しています。
検査の結果によって、心雑音があっても軽度であれば定期的な経過観察で済むこともありますが、病気が進行している場合は、内服薬による治療やフードの見直しが必要になることもあります。
5. 検査費用の目安(2025年6月時点)
当院では、犬の心臓の健康状態をしっかり把握するための以下の検査セットをご用意しています。
◆心臓画像検査セット 14,300円(税込)
・胸部レントゲン(2枚)
・胸部超音波検査
◆全身画像検査セット 25,300円(税込)
・腹部レントゲン(2枚)
・胸部レントゲン(2枚)
・腹部超音波検査
・胸部超音波検査
※検査内容は、症状や獣医師の判断により変更になる場合があります。また最新の情報は、当院ホームページにてご確認ください。
6. おわりに|早期発見と定期健診のすすめ
心雑音は、心臓の病気を早めに見つけるための大切なサインです。
中でも僧帽弁閉鎖不全症などは、聴診で雑音が確認されたことをきっかけに発見されるケースも多く、早期の治療によって進行を抑えやすくなります。特に心臓病のリスクが高い犬種を飼われている方や、シニア期の愛犬と暮らしている方には、定期的な健康診断をおすすめしています。
にゅうた動物病院では、心雑音に関する診療を月間約200件行っており、豊富な経験をもとに、丁寧な診察と分かりやすいご説明を心がけています。現在かかりつけの病院がある方でも、気になる症状がある場合にはセカンドオピニオンとしてのご相談も受け付けています。どうぞお気軽にご相談ください。
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