犬の心雑音~病気と決めつける前にまずは検査から~
■目次
1.心臓の雑音とは
2.心雑音があると診断されたときに何をすれば良いのか
3.心臓の雑音で疑われる病気の説明
4.心臓検査の内容
5.心臓検査の料金
6.まとめ
1.心臓の雑音とは
心臓の雑音(心雑音)とは、本来心臓が拍動する際に聞こえることがない異常な音です。病気ではないものも一部ありますが、一般的には心臓や血管の機能に何か異常がある場合に心雑音が聞こえます。
心雑音を生じる原因としては、心臓の部屋と、部屋を隔てる部分にある弁が形態的あるいは機能的に変化する病気が多く挙げられます。
どのような雑音があり、それがどの程度の強さで聞こえるかが、心臓の機能を評価する指標の1つとなります。
2.心雑音があると診断されたときに何をすれば良いのか
健康診断などで心雑音があると診断された場合、何をすべきでしょうか?
まずはその雑音がどこから聞こえるのか、いつ聞こえるのか、そして大きさはどの程度なのかを調べる必要があります。
心雑音は出現するタイミングによって、収縮期、拡張期、連続性などに分類されます。また心雑音の最強点を見つけることで、どの領域に異常があるのかを推察できます。
加えて心雑音の大きさは、Levineの6段階分類法によって1~6段階に分けられます。一般的に、雑音が大きくなる(6に近づく)ほど心臓の病気が重症であるといわれています。
これらの情報をもとに、後述する心臓検査を実施して、どこにどのような異常があるのかを評価していきます。
3.心臓の雑音で疑われる病気の説明
犬で心雑音が発生する病気で、最も多いのが僧帽弁閉鎖不全症です。左心房と左心室の間にある僧帽弁といわれる弁がしっかり閉じないことで、左心室から左心房方向へ血液が逆流する心臓弁膜症の1つです。
高齢の小型犬、特に8歳頃から徐々に発生頻度が高まり、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルやチワワのような犬種がかかりやすい犬種といわれます。
また、三尖弁閉鎖不全症という別の弁膜症を合併していることがあります。
僧帽弁閉鎖不全症は、咳や息切れなどが主な症状です。三尖弁閉鎖不全症では腹水がたまることがあります。いずれも全収縮期雑音といって、「ザー」という音が収縮時にずっと聞こえることが特徴です。
そのほか、心臓の筋肉に異常が生じる病気でも心雑音が聴取されることがあります。犬ではドーベルマンやボクサーといった大型犬で、拡張型心筋症が発生することがあります。
生まれつきの(先天的な)心臓の病気で比較的よく遭遇するのが動脈管開存症で、トイ・プードルやマルチーズに多いとされています。この病気では連続性雑音といって、心臓が拡張して収縮するまで継続して「ザー」という音が聞こえます。
このように、一口に心雑音といっても音の種類は多種多様で、年齢や犬種によってかかりやすい病気も異なります。また、雑音が聞こえるからといって症状が表れているとは限りませんが、これらの病気では全身に血液を送るという心臓の機能が落ちるため、程度が悪くなってくると、元気の消失やお散歩に行きたがらない、睡眠が浅くなる、といった変化が表れることがあります。
僧帽弁閉鎖不全症についてはこちらの記事でも解説しています。
犬の僧帽弁閉鎖不全症について|高齢の犬でよく見られる病気
4.心臓検査の内容
まずは心臓の状態を正確に把握して、適切な状況で必要とされるケアを行うことが大切です。そのために心臓検査を実施します。
心臓と周辺部分の聴診をはじめ、その他に血圧、血液検査、心電図、レントゲン撮影、心エコー検査を主な項目として確認していきます。
特に心エコー検査はとても有用で、心臓の大きさや、弁の機能、血液の流れ方などを可視化することで、動物を傷つけることなく、心臓の機能をリアルタイムで評価できます。
それぞれの検査によって得られた情報を整理して、どのような問題があるのかを精査していきます。
心臓の病気は、早期発見・早期治療できるかが、大切なご家族の生活の質を維持するために重要なポイントとなります。心雑音が確認された場合は、早めに精密検査を受診することをおすすめします。
また、弁膜症や心筋症などの影響を受けた心臓の状態によって、治療方法やお薬の種類が変わります。なお、心雑音があっても軽度で、心臓の大きさや機能に変化がみられない場合は、定期的に検診を受けていただくのみでお薬による治療は必要ないこともあります。検査後には日常生活での注意点などを獣医師からご説明し、健やかに過ごすためのご提案をいたします。
5.心臓検査の料金
当院では病気の早期発見・早期治療を目指しており、定期的な健康診断をおすすめしております。
(2024/1/29 時点)
・心臓画像検査セット 14,300円(税込)
内容:1、胸部レントゲン2枚
2、胸部超音波検査
・全身画像検査セット 25,300円(税込)
内容:1、腹部レントゲン2枚
2、胸部レントゲン2枚
3、腹部超音波
4、胸部超音波
最新の健康診断についての情報はホームページから
6.まとめ
聴診は、普段の診察の際に行う基本的な検査方法です。この聴診で得られる貴重なデータ、特に心雑音は、心臓の機能に何らかの変化が表れていることをいち早く知るサインとなります。僧帽弁閉鎖不全症をはじめ、心臓の病気では心雑音を生じるものが多くあります。普段は健康な子であっても、定期的にかかりつけの獣医師に聴診してもらうことが重要です。
当院では心雑音に関する診療を月間200件程度行っており、豊富な臨床経験を生かした診療が可能です。
特に心臓の病気にかかりやすい犬種を飼育されている方は、積極的に健康診断を受けていただくことをおすすめします。
また、セカンドオピニオンとしてもにゅうた動物病院をぜひご利用ください。
にゅうた動物病院|相模原市 相模大野・東林間の動物病院
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