にゅうた動物病院コラム

犬のシニア期は何歳から?| 獣医師が解説する老犬のサインと健康管理のポイント

犬のシニア期は何歳から?| 獣医師が解説する老犬のサインと健康管理のポイント

愛犬もまた私たちと同じく、時間が経てば年齢を重ねていきます。高齢期に入ると体調に変化が現れることが増え、今までのように元気でいられない日が増えることもあります。

愛犬との幸せな時間を少しでも長くするためにはシニア期の始まりを見極め、年齢に合わせたケアを行うことが大切です。
適切なケアを施すことで、愛犬の健康寿命を延ばし、快適な毎日をサポートできます。

当院でも、「うちの子はもう老犬でしょうか?」「どのようにすれば年を取っても健康でいられるでしょうか?」といったご質問やご相談を多くいただいております。

今回は、愛犬のシニア期に見られる特徴や、健康管理のポイントについてご紹介します。

シニア期の健康診断についてはこちらで解説しています

■目次
1.犬のシニア期って何歳から?
2.小型犬・中型犬・大型犬別のシニア期の目安
3.大型犬が早くシニア期を迎える理由
4.シニア期特有の身体の変化とは?
5.シニア犬の健康管理のポイント
6.まとめ

 

1、犬のシニア期って何歳から?


犬は人に比べて寿命が短く、年齢の進み方も早いため、シニア期の始まりを理解することが大切です。
例えば小型犬では平均寿命が13〜15歳とされ、人の80歳に相当します。犬は一般的に人の5~6倍の速さで年を重ねるとされ、愛犬の年齢に5〜6を掛けて人の年齢に換算する方法もよく知られています。

ただし、犬の寿命や老化のスピードは犬種や体の大きさによって異なるため、シニア期の始まりにも違いがあります。

 

2、小型犬・中型犬・大型犬別のシニア期の目安


犬種や体格によってシニア期の始まりは異なりますが、おおよその目安として以下のように分けられます。

・小型犬(体重が10kg未満)
シニア期は8〜9歳頃から始まるとされます。
小型犬は比較的長寿で、老化もゆるやかな場合が多いです。代表的な犬種には、トイ・プードル、チワワ、ミニチュア・ダックスフンドなどが含まれます。

 

・中型犬(体重が10~25kg)
中型犬は7〜8歳頃からシニア期に入るとされています。
体が小型犬よりも大きいため、やや早く老化のサインが現れることがあります。柴犬、フレンチ・ブルドッグ、ボーダー・コリーなどが該当します。

 

・大型犬(体重が25kg以上)
大型犬は6〜7歳頃からシニア期が始まります。
大型犬は寿命が短めで成犬になるまでの成長が早い分、シニア期も早く訪れる傾向があります。ゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバー、バーニーズ・マウンテン・ドッグなどが代表的です。

 

3、大型犬が早くシニア期を迎える理由


大型犬はその体の大きさゆえ、小型犬に比べてシニア期が早く訪れる傾向にあります。その背景には成長と体の維持にかかる負担が関係しています。

まず、大型犬は急速に体を大きくする必要があるため、成長時に多くの細胞分裂が行われます。細胞が分裂する回数が増えると、その分、細胞や組織に負担がかかりやすくなり、老化が進みやすくなると考えられています。

また、大型犬はその大きな体を維持するために大量のエネルギーを消費します。このエネルギー消費に伴って、臓器や骨、筋肉に対する負担も増加します。
例えば、体重の重さがそのまま関節に圧力をかけるため、関節が摩耗しやすくなります。

他にも、大きな体を維持するためには内臓もより活発に働かなくてはならず、心臓や肝臓、腎臓などへの負担が小型犬に比べて大きくなります。

このような負担の積み重ねが、大型犬が早く老化する一因と考えられています。

 

4、シニア期特有の身体の変化とは?


シニア期に入った犬には、加齢に伴うさまざまな身体の変化が現れることがあります。
最近、愛犬に次のような様子は見られていないでしょうか?

<目の変化>
白っぽくなる(核硬化症):目の透明感が失われ、うっすら白濁したように見えることがあります。核硬化症は老犬に多く、通常視力には大きな影響を与えませんが、進行すると見えにくくなる場合もあります。

物や壁にぶつかる:視力の低下で障害物にぶつかりやすくなることがあります。視覚サポートとして、生活環境に配慮してあげましょう。

 

<耳の変化>
聞こえにくくなる:シニア犬は聴力が低下し、呼びかけに反応しなくなることがあります。大きな音や床をトントンと叩くなど振動を活用してコミュニケーションをとると安心です。

反応が鈍くなる:耳が聞こえにくくなると、呼びかけに対する反応が鈍くなる場合があります。飼い主様からの合図が見える位置にいることで、安心感が高まります。

 

<筋肉や関節の変化>
立ち上がるのに時間がかかる:筋肉量や関節の柔軟性が低下し、立ち上がる動作に時間がかかるようになります。急な運動や負担を避け、床を滑りにくいように工夫するとよいでしょう。

段差を嫌がる:関節の痛みや筋力の衰えから段差を嫌がることが増えます。関節サポートのマットやサプリメントも有効です。

足を引きずる:特に寒い時期や、長時間の安静後に足を引きずる様子が見られることも。日々の軽いストレッチやマッサージでケアをしてあげましょう。

猫の変形性関節症についてはこちらで解説しています

 

<歯や口の変化>
歯の変色(黄色や茶色):歯の表面が黄色や茶色に変色してくるのは歯石や歯垢の蓄積によるもので、年齢を重ねるにつれて多くの犬で見られます。

口臭が強くなる:口内の菌や歯周病が進むと口臭が強くなりがちです。口腔内の健康を保つために、デンタルケアがより重要になります。

歯周病についてはこちらで解説しています

 

これらの変化は自然な老化現象ですので、過度に心配する必要はありませんが、シニア期を健やかに過ごすためには早めのケアが重要になります。
特に歯のケアは、ごはんをしっかり食べる力や栄養の吸収、認知機能の維持といった生活の質(QOL)にも直結し、歯周病はその他の臓器に悪影響が及ぶと様さまざまな病気の原因にもなりますので、日々の丁寧なケアが大切です。

 

5、シニア犬の健康管理のポイント


シニア期に入った愛犬が健康で快適に過ごすためには、日々のケアがとても大切です。ご家庭で行えるケアを3つのポイントに分けてご紹介します。

<十分な栄養を含む食事>
シニア犬は代謝や運動量が低下するため、若い頃と同じ食事では栄養が不足したりカロリーが過剰になったりすることがあります。次のような工夫で栄養バランスを見直しましょう。

シニア用フードへの切り替え:年齢に合わせて消化しやすく、必要な栄養素を含むシニア期用のフードが適しています。

フードの選び方についてはこちらで解説しています

サプリメントの活用:関節の健康をサポートするグルコサミンやコンドロイチン、不飽和脂肪酸などを含むサプリメントを補うと、皮膚や被毛、関節のケアにも役立ちます。

漢方薬による養生:犬や猫が歳を重ねると、見た目は元気でも体の中では少しずつ衰えが進んでいきます。そのため、病気になってからではなく、未病の段階からケアを始めることが大切です。
漢方薬を活用することで年齢とともに不足しがちな部分を補い、病気になりにくい体作りをサポートできます。また、体の内側から整えることで、健康で元気に過ごせる時間をより長く保つことが期待できます。

 

<適度な運動>
年齢を重ねても筋力や運動機能を維持するために、適度な運動を継続することが重要です。

無理のない範囲でのお散歩:シニア犬は若い頃のような激しい運動は難しくなりますが、散歩を毎日行うことが筋肉と関節の健康維持に効果的です。
また、活力が低下すると、散歩や運動への意欲が減ってしまうことがあります。そのような場合は、愛犬自身が歩きたい時間よりも少し長めに運動をさせてあげる方がよいでしょう。

外出での刺激:外の環境に触れ、においや音などの刺激を受けることで、脳を活性化させ、認知機能の維持にもつながります。特に季節の変化を感じる散歩は、シニア犬にとってリフレッシュになるでしょう。

 

<定期的な健康診断>
ご家庭のケアだけでは気づきにくい病気や年齢による体の変化もあります。定期的に獣医師の診断を受け、専門的な視点から健康を管理することが大切です。

定期的な健康診断についてはこちらで解説しています

シニア期に入ったら健康診断の頻度を年に2回以上に増やし、早期発見・早期治療につなげましょう。特に血液検査や内臓の検査は、病気の予防や早期発見に役立ちます。

 

まとめ|シニア期を健やかに過ごすために


シニア期の愛犬が健康で快適に過ごせるようにするためには、まず「愛犬がシニア期に入っているかどうか」を知り、現在の健康状態をきちんと把握することが重要です。シニア犬の健康管理には、食事や運動、定期的な健康診断といった日々のケアが欠かせません。愛犬の変化に気づいたら、今回ご紹介したようなポイントを参考にしながら、シニア期を意識したケアを心がけましょう。

また、シニア期には自然な老化現象に加え、病気のリスクも高まります。気になる症状や不安があればかかりつけの獣医師に相談し、必要に応じて適切な対策を取ることが大切です。動物病院と二人三脚でケアを続け、定期的な健康診断も欠かさず受けることで、病気の早期発見・早期治療につながります。

シニア期に入った愛犬にとって、飼い主様のサポートは何よりの支えです。愛犬が毎日を元気に、健やかに過ごせるよう一緒に歩んでいきましょう。

 

にゅうた動物病院|相模原市 相模大野・東林間の動物病院
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<参考文献>
Risk Factors Associated with Lifespan in Pet Dogs Evaluated in Primary Care Veterinary Hospitals | Journal of the American Animal Hospital Association

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