犬の甲状腺機能低下症について|食欲がないのに体重が増加する場合は要注意
甲状腺とは動物の代謝を調整するホルモンを分泌する器官で、首元に位置しています。特に犬では、甲状腺機能低下症と呼ばれる甲状腺の病気が多く見られます。
この病気にかかると、食欲や元気がないのに体重が増加する、あるいはお散歩に行きたがらない、といった症状が現れます。しかし、高齢になると病気が原因でなくても同様の症状を示す犬は多く、元々おっとりとした性格の犬もいますので、ご家庭で発見することが難しい病気の1つです。
今回は甲状腺機能低下症について、症状や原因とともに、当院での診断・治療方針を中心にご紹介します。
■目次
1.よく見られる症状
2.原因
3.診断について
4.治療について
5.日常での注意点や予防
6.最後に
1.よく見られる症状
特に目立つのは皮膚に関する症状で、背中や尻尾の部分での脱毛、フケの発生、色素沈着などが見られます。さらに、顔の皮膚がたるみ、垂れ目で悲しんでいるように見える「悲劇的顔貌」という特徴的な表情が観察されることもあります。
それ以外にも、代謝が落ちることで動きが鈍くなる、元気や食欲がなくなる、体重が増加しやすくなる、お散歩に行きたがらない、といった症状も現れます。特に、食欲がないにもかかわらず体重が増加する場合は、甲状腺機能低下症の可能性があるとお考えください。
また、まれにですが神経症状が現れるケースもあります。
2.原因
詳しい原因はよくわかっていませんが、甲状腺自体に異常があり、甲状腺ホルモンの分泌量が減ることで代謝が悪くなって発症するケースが多いと考えられています。
また発症しやすい犬種として、アメリカン・コッカー・スパニエルやドーベルマン、シェットランド・シープドッグ、レトリーバー種などが知られています。
中高齢で多いといわれていますが、どんな年齢でも起こりうる病気です。
3.診断について
診断では、皮膚の症状を観察するだけでなく、血液検査、ホルモン検査、画像検査などを実施して総合的に判断します。
これらの検査の中でも、ホルモン検査は特に重要で、サイロキシン(T4:tT4とfT4に分かれます)と甲状腺刺激ホルモン(TSH)という項目を測定します。
なお、tT4のレベルが低く、TSHのレベルが高い場合、甲状腺機能低下症の可能性が高いと考えますが、tT4は他の病気によって低下することもあるので、tT4の数値だけで判断すると誤った方向性で治療を進めてしまう危険性があります。
したがって、数値が低下している原因を正確に特定し、その上で適切な治療計画を立てることが重要になります。
また、画像検査では主に超音波検査を利用して、甲状腺のサイズや状態を確認します。
血液検査についてはこちらで解説しています
画像検査(レントゲン検査・エコー検査)についてはこちらで解説しています
4.治療について
甲状腺機能低下症では、不足している甲状腺ホルモンを補うための甲状腺ホルモン製剤の投与が基本的な治療法となります。
この治療法では、適切な量の薬剤を処方することが重要で、特に必要以上の量を投与すると、代謝がよくなりすぎて副反応を引き起こす可能性があります。そのため、当院では状態に応じて、まずは少量から薬の投与を開始し、その後の患者様の反応を見ながら、徐々に投与量を調整していきます。
この治療には時間がかかりますが、しっかりと投薬できていれば症状も改善して、普段通りの生活を続けられます。
5.日常での注意点や予防
詳しい原因がわからないため、予防は困難です。脱毛や皮膚のたるみ、食欲や元気がないのに体重が増加するなどの症状が現れたら、早めに動物病院を受診しましょう。
6.最後に
甲状腺機能低下症で重要なのは、検査結果を正しく読み取り、原因を突き止めることです。特に、皮膚の症状が見られる場合、皮膚の病気によるものと思われがちですが、甲状腺機能低下症のようなホルモンに関連する病気が原因である可能性もあります。
また、「年だから太りやすくなったのかな……」と見過ごされがちな病気でもありますが、もしも何か気になる症状があれば、どうぞ遠慮なく当院までご相談ください。みなさまの愛犬、愛猫が健やかな毎日を送れるようサポートさせていただきます。
■関連する病気についてはこちらでも解説しています。
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