にゅうた動物病院コラム

犬の胆嚢摘出手術|症状から術後ケアまで徹底解説

犬の胆嚢摘出手術|症状から術後ケアまで徹底解説

愛犬が元気をなくしている様子を見ると、飼い主様はとても心配になりますよね。
特に、黄疸が出たり、お腹を痛がったりする症状が見られる場合「胆嚢粘液嚢腫(たんのうねんえきのうしゅ)」という病気が疑われます。
この病気は進行すると重篤な状態に陥り、命に関わることもあるため、早期発見と迅速な対応がとても大切です。

治療法には、まず薬による内科療法が選択されることもありますが、状態によっては胆嚢摘出手術が必要になるケースもあります。
そのため、愛犬のためにも、それぞれの治療法の特徴をあらかじめ知っておくことが大切です。

そこで今回は、胆嚢摘出手術に焦点を当てて、手術の流れや術後のケアについて解説していきます。

■目次
1.犬の胆嚢粘液嚢腫とは? 症状と発見のきっかけ
2.胆嚢摘出手術が必要となるケース
3.胆嚢摘出手術後の経過と注意点
4.手術以外の治療選択肢と予防
5.おわりに

 

1.犬の胆嚢粘液嚢腫とは? 症状と発見のきっかけ


胆嚢(たんのう)とは、肝臓のそばにある袋状の小さな臓器で、胆汁という消化液を蓄える役割を担っています。
犬によく見られる胆嚢の病気のひとつに、「胆嚢粘液嚢腫(たんのうねんえきのうしゅ)」があります。

胆嚢粘液嚢腫についてはこちらで解説しています

この病気は、胆嚢の中に粘り気のある液体がたまることで発症し、次第に胆汁の流れが悪くなるのが特徴です。
特に、シー・ズーやミニチュア・シュナウザーといった犬種に多く見られることが知られています。

ただし、初期段階では、食欲の低下、嘔吐、元気がなくなるといった、一見わかりにくい症状しか現れないことが多く、ご家庭では気づかれない場合も少なくありません。
しかし、病気が進行すると、粘膜が黄色く変化する黄疸や、お腹の痛みなど、よりはっきりとした症状が出るようになります。
さらに、重症化すると命に関わる恐れもあるため、少しでも異変を感じたら早めに動物病院を受診することが大切です。

 

2.胆嚢摘出手術が必要となるケース


胆嚢粘液嚢腫の治療には、薬による内科療法と手術の2つの選択肢があります。
その中で、胆嚢摘出手術が必要となるのは、次のような場合です。

内科療法がうまくいかない場合
胆嚢破裂のリスクが高い場合(完全閉塞・不完全閉塞を問わず、胆管が詰まっているとリスクが高まります)

特に、胆嚢破裂胆管閉塞が疑われる場合には、放置すると命に関わる危険性があるため、緊急手術が必要になることもあります。

手術が必要かどうかを見極めるためには、画像検査がとても大切です。
そのため、動物病院に来院された際には、超音波検査CT検査を行い、肝臓や胆嚢の状態をしっかり確認することがポイントになります。
早期発見と適切な治療によって、予後を大きく改善できる可能性があります。

 

3.胆嚢摘出手術後の経過と注意点


手術後の回復のスピードは、術前の愛犬の体調によって大きく左右されます。
もし腹膜炎などの緊急性の高い症状がなく、体調が比較的安定している場合は手術後5日ほどの入院で退院できることもあります。

一方で、術前の状態が悪いと手術自体のリスクが高まるだけでなく、術後の回復にも時間がかかり、入院期間が3週間以上に及ぶこともあります。

退院後はご家庭でのケアがとても重要です。特に、食事管理運動制限にはしっかりと注意を払っていただく必要があります。

・食事:脂肪分の少ないフードへ切り替え、個々の状態に合わせた栄養指導を行っています。
・運動:愛犬の回復具合を見ながら、少しずつ運動量を増やしていきます。

さらに、ご家庭でのケアに加えて動物病院での定期的な検査も欠かせません。
当院では、治療の効果や体調の変化をきちんと把握するために、定期的なフォローアップを行っています。

また、術後の生活について、飼い主様から「胆嚢を摘出してしまっても大丈夫なのでしょうか?」というご質問をよくいただきます。
胆嚢は胆汁を一時的にためておく臓器ですが、胆汁自体は肝臓で作られているため胆嚢がなくても日常生活に大きな支障はありません。
ただし、まれに手術後に下痢をしやすくなる場合もありますので、退院後もしばらくは注意深く様子を見てあげましょう。

 

4.手術以外の治療選択肢と予防


症状がほとんどない場合には、内科療法も治療の選択肢に入ってきます。

胆嚢粘液嚢腫は初期症状に気づきにくい病気なので、早期に発見するには定期的な定期的な健康診断がとても大切になります。
目立った症状がなくても、年に1〜2回は検査を受けることをおすすめしています。

当院では血液検査に加えて、腹部画像検査セット(レントゲン検査と超音波検査を組み合わせたプラン)もご用意していますので、ぜひこちらもご利用ください。

当院の健康診断の詳細についてはこちら

また、胆嚢粘液嚢腫を予防するためには、ご家庭でのケアもとても大切です。
健康診断と合わせて、脂肪分を控えた食事や、適度な運動を日常に取り入れるように心がけましょう。

 

5.おわりに


胆嚢粘液嚢腫は進行すると愛犬の体に深刻な影響を及ぼしますが、早期発見と適切な治療によって最悪の事態を避けることができます。

当院では胆嚢摘出手術などの外科手術にも対応できるよう、検査・治療体制を整えています。少しでも気になる症状があれば、早めにご相談ください。

動物病院は愛犬の健康を守るためのパートナーです。当院では飼い主様や愛犬に信頼していただけるよう、飼い主様と愛犬に安心して信頼していただける診察・治療を心がけ、日々誠心誠意取り組んでいます。

 

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にゅうた動物病院|相模原市 相模大野・東林間の動物病院
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<参考文献>
Cook, A. K., & Breitschwerdt, E. B.(2015)「Gallbladder mucocoele: A review」*Journal of theSouth African Veterinary Association*, 86(1), a1254. https://doi.org/10.4102/jsava.v86i1.1254  (2025年4月20日閲覧)

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