犬猫の高齢期ケアに漢方治療を|自然治癒力を高める方法とは?
近年、犬や猫の平均寿命が年々延び、愛犬や愛猫と過ごせる時間が長くなってきましたね。このように大切な家族とより多くの時間を共有できるのは、本当に幸せなことです。
一方で、高齢化に伴い、健康面での悩みが増えていることも事実です。
年齢を重ねた犬や猫が、できるだけ快適で元気に日々を過ごせるようにと願う飼い主様が増える中、近年では「漢方治療」に注目が集まるようになっています。
漢方は自然由来の成分を用いるため、体への負担が少ないとされ、特に高齢の犬や猫の健康管理に適しているといわれています。
たとえば、食欲が落ちてきたり、関節の痛みを抱えたり、慢性的な不調を感じる子のサポートとして、漢方を取り入れるケースが増えてきています。
今回は、漢方治療が高齢の犬や猫にどのように役立つのか、実際によく使われる薬の種類、そして治療を始める前に知っておきたい注意点についてわかりやすく解説していきます。
■目次
1.高齢の犬や猫に漢方治療が注目される理由
2.高齢の犬や猫によく使われる漢方薬
3.動物に使用される漢方薬について
4.漢方治療を始める前に知っておきたいこと
5.まとめ|漢方治療成功のためのポイント
1.高齢の犬や猫に漢方治療が注目される理由
・現代医学では対応しにくい「加齢による変化」
犬や猫も高齢期を迎えると、体力や内臓機能の衰えや、免疫力が低下することがあります。
現代医学では検査結果に基づいて病名を診断し、それに応じた治療を行うのが一般的です。
そのため、加齢による変化は病気が原因でない場合が多く、検査で異常が見つからなければ治療の対象になりにくいという課題があります。
・漢方治療の独自のアプローチ
漢方治療は「四診」と呼ばれる独自の診断方法を用います。この方法では、視覚や聴覚、触覚など五感を活用して体の状態を診断します。
この際、愛犬や愛猫の元々の体質や生活環境も考慮しながら、体全体のバランスを表す「証(しょう)」を判断し、それに基づいて適切な治療薬を選ぶのが特徴です。
そのため、病名がなくても、「なんとなく調子が悪い」「元気がない」といった曖昧な不調にも対応できるのが特徴です。
・自然治癒力を高める漢方の力
漢方治療には、体のバランスを整えて自然治癒力を引き出す効果が期待されています。そのため、「最近元気がない」「食欲が落ちてきた」といった高齢期特有の症状にも対応できます。
・漢方薬のメリット|副作用が少ない
漢方薬には、副作用が少ないというメリットがあります。高齢の犬や猫は体力が落ちやすいため、身体に優しい治療法を選べるのは安心です。
また、漢方薬は長期間の服用にも適しているため、慢性的な症状がある場合にも活用されています。
・現代医学との併用で相乗効果
高齢期はさまざまな病気にかかりやすい時期でもありますが、漢方治療と現代医学を組み合わせることで相乗効果が期待できます。
たとえば、漢方薬が自然治癒力を高めることで、現代医学の治療に必要な薬の量を減らせることがあり、愛犬や愛猫への負担を軽くする助けになります。
2.高齢の犬や猫によく使われる漢方薬
高齢期特有の体調や症状に対応するために、犬や猫にもさまざまな漢方薬が処方されることがあります。以下は、一般的に処方されることのある漢方薬とその特徴です。
・八味地黄丸(はちみじおうがん)
体を温めて痛みや冷えを和らげる効果がある漢方薬です。
また、腎機能の低下をサポートする働きも期待されています。高齢期に多くみられる腰痛や関節の痛み、さらには排尿障害がある場合に使われることが多いです。
・六君子湯(りっくんしとう)
胃腸の働きを改善する効果があります。食欲不振や嘔吐、消化不良、さらには胃の不快感がある場合に処方されます。
・抑肝散(よくかんさん)
自律神経のバランスを整える漢方薬です。認知機能の低下に伴うイライラや興奮、不眠などの症状を緩和する効果が期待されています。
また、分離不安が原因で無駄吠えが多くなったり、落ち着きがなくなったりする場合にも役立つことがあります。
なお、当院では人間用の漢方薬ではなく、以下ページに掲載されているような漢方サプリメントを組み合わせて養生いたします。気になる方は当院までお気軽にご相談ください
https://j-pcm.com/about/products/
3.動物に使用される漢方薬について
犬や猫に使用される漢方薬には、主に人用の漢方薬または、動物用に作られた漢方サプリメントが利用されます。動物用サプリメントであっても、漢方の成分がしっかりと配合されているため、人用の漢方薬と同様の効果が期待できるのが特徴です。
ただし、犬や猫は人とは体の構造や代謝が異なるため、漢方薬を使用する際には慎重な判断が必要です。成分の含有量や配合バランスが体重や体質に適しているかを確認するため、必ず獣医師に相談してから使用するようにしましょう。
4.漢方治療を始める前に知っておきたいこと
漢方薬は、先ほども触れたように「証(しょう)」に基づいて処方されるため、犬や猫それぞれの体質や状態に合わせて治療法が異なります。
たとえば、同じ「食欲不振」であっても、体の状態や「証」が異なれば、処方される漢方薬も変わる可能性があります。
そのため、症状だけを見て市販の漢方薬を使ったり、他の飼い主様が処方された薬を安易に試したりすることは非常に危険です。
また、漢方に限らず、「健康によい」とされる薬やサプリメントも見境なく与えると、かえって健康を損なうことがあります。これらを愛犬や愛猫に与える際は、必ず獣医師に相談し、安全性を確認するようにしましょう。
さらに、漢方薬は基本的に西洋薬と併用できる場合が多いですが、ごく稀に相性が良くない場合もあります。
特に既往症がある場合やすでに服用中の薬がある場合には、診察時に獣医師にすべて伝えるようにしましょう。
5.まとめ|漢方治療成功のためのポイント
年を重ねて見た目は変わらなくても、犬や猫の体の機能は少しずつ衰えていきます。
そのため、衰えをそのままにせず、早い段階から漢方を取り入れて健康をサポートしていくことが大切です。
たとえ目に見える症状がなくても、高齢期に入ったら一度かかりつけの獣医師に相談し、愛犬や愛猫に適した漢方治療を始めてみるとよいでしょう。
今回ご紹介した内容を参考に、もし気になる症状がある場合や、漢方治療についてさらに詳しく知りたいことがあれば、ぜひお気軽に当院にご相談ください。
大切な家族である愛犬や愛猫の健康を、一緒に守っていきましょう。
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にゅうた動物病院|相模原市 相模大野・東林間の動物病院
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<参考>
これ1冊できちんとわかる 図解 東洋医学