にゅうた動物病院コラム

シニア犬の散歩時間の適切な目安とは?|年齢・体調別の運動方法を解説

シニア犬の散歩時間の適切な目安とは?|年齢・体調別の運動方法を解説

大型犬では7歳以上、小型犬では10歳以上になると、「シニア犬」と呼ばれることが一般的です。高齢になると、さまざまな病気にかかりやすくなるだけでなく、運動機能が衰えるので、心配事が増えますよね。

特に多くの方から寄せられるご相談の一つが、「シニア犬の散歩時間はどのくらいが適切なのか?」ということです。
健康を維持するためには毎日の運動が重要ですが、高齢期に入ると、若いころと同じようなペースや時間での散歩が難しくなる場合があります。
そのため、「どのように散歩時間を調整すればよいのか」「体調を考慮して何に気をつければよいのか」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。

今回は、愛犬の体調に不安を感じている方や、これからシニア期を迎える愛犬と一緒に過ごされている飼い主様に向けて、シニア犬に適した散歩時間の目安や散歩時のポイントについて、分かりやすくお伝えします。

■目次
1.シニア犬の運動量の目安
2.シニア犬の散歩で気をつけるべき4つのポイント
3.室内での運動の取り入れ方
4.運動中に注意すべきシニア犬の異変サイン
5.おわりに

 

1.シニア犬の運動量の目安


シニア犬の運動量を考える際には、愛犬の健康状態や気力をよく観察することが大切です。
まず、持病や痛みがない場合であれば、無理に散歩時間を短くする必要はありません。基本的には、若いころの散歩時間や回数を基準にするのがよいでしょう。
元気な犬の散歩時間を減らしすぎると、運動不足が原因で筋力が衰えたり、肥満のリスクが高まったりする可能性があるため注意が必要です。

一方で、病気がなくても年齢とともに気力が落ちて、散歩を短い時間で切り上げたがる犬もいます。
このような場合、愛犬にもう少し歩いてもらう工夫をしてあげることがポイントです。例えば、散歩の途中で適度に抱っこして休憩を取る、頑張ったらご褒美をあげるなど、愛犬が散歩を楽しめるような方法を取り入れてみてください。

また、もし愛犬が何らかの病気を抱えていたり、関節に痛みがあったり、散歩後に極端に疲れた様子を見せる場合には、散歩時間を少しずつ短く調整するのがよいでしょう。具体的には、1回の散歩時間を5分ずつ減らして、負担が軽くなるように工夫してみてください。

 

2.シニア犬の散歩で気をつけるべき4つのポイント


シニア犬との散歩では、年齢や体調に配慮しながら安心して楽しめるようにすることが大切です。ここでは、散歩時に特に気をつけていただきたい4つのポイントをお伝えします。

<天候や気温への配慮>
シニア犬にとって、暑さや寒さは若いころ以上に負担になります。特に夏場は熱中症のリスクが高まるため、早朝や夕暮れ後の涼しい時間帯を選んで散歩をするのがおすすめです。
一方で、雨の日には毛が濡れて体温が下がりやすく、濡れた路面で滑る危険性もあります。そのため、無理に外に連れ出さず、別の方法で体を動かしてあげるようにしましょう。

 

<こまめな休憩と水分補給>
シニア犬は若いころよりも疲れやすく、筋力も低下していることがあります。そのため、散歩中はこまめに休憩を取り、その都度お水を飲ませるようにしましょう。
散歩用の携帯ボトルや折りたたみ式の水皿を用意しておくと便利です。

 

<関節への負担を考慮したコース選び>
愛犬の歩くスピードが以前より遅くなっている場合は、平坦な道を選んで関節への負担をなるべく軽減させましょう。
一方、運動機能に特に問題がない場合には、坂道など少し負荷がかかるコースを取り入れることで、足腰の筋力を維持することもできます。愛犬の体調を見ながら、無理のない範囲でコースを工夫しましょう。

 

<散歩前後のケア方法>
寝ているところから急に歩き出すと手足に負担がかかるので、散歩前には軽く犬の手足を動かしてあげましょう。
また、散歩が終わった後は、手足を濡れたタオルで拭いて清潔にし、ゆっくり休める環境を整えてあげてください。

 

3.室内での運動の取り入れ方


天候が悪い日や愛犬の体調が万全でない日は、室内でできる運動を取り入れるのがよいでしょう。特にシニア犬には、体力や筋力を無理なく維持できる軽い運動が適しています。以下はおすすめの室内運動とその注意点です。

・バランスディスクを活用
バランスディスクの上に立たせることで、バランス感覚や体を支える筋力を養うことができます。無理のない範囲で、短時間から始めましょう。最初は怖がる場合もあるので、少しずつ慣らしていくのがポイントです。
バランスディスと犬の画像

 

・知育遊びで脳を刺激
ノーズワークマットや、おやつを隠したおもちゃを使った遊びは、頭を使わせることで認知機能を維持しつつ、集中力を高めます。
知育おもちゃを咥えている犬の画像

 

・障害物跨ぎで手足を動かす
ラップの芯や棒などの軽い障害物を設置し、ゆっくりと跨がせる運動は、手足を上げる動きを促して筋力維持に役立ちます。
この運動は、簡単ながらも全身の動きにつながるため、特に足腰の筋力をキープするのに効果的です。

 

<室内運動時の注意点>
室内で運動するときには、筋肉や関節に負荷を与えないようにするため、急な動き(急に止まったり動いたり)は避けましょう
また、滑りやすい床での運動は事故につながるので、カーペットを敷くなど、対策を考えましょう。

 

4.運動中に注意すべきシニア犬の異変サイン


シニア犬との運動中には、体調の変化をよく観察することが重要です。特に以下のようなサインが見られた場合は、すぐに運動を中止し、愛犬の体を休ませましょう。

・息切れを起こす
運動中に息が荒く、苦しそうにしている場合は、心臓に過度の負担がかかっている可能性があります。シニア犬は心臓や呼吸器に負担がかかりやすいので、無理をさせないようにしましょう。

 

・よろめく
歩行中に足取りが不安定になり、ふらつく様子が見られたら、運動の負荷が大きすぎる可能性があります。このまま続けると、転倒やケガにつながるおそれがあるため注意が必要です。

 

・急に歩くスピードが遅くなる、足を上げる
運動中に突然ペースが落ちた場合や、片足をかばうような動作が見られる場合、筋肉や骨、関節に痛みを感じている可能性があります。特に関節疾患を抱えるシニア犬ではこうしたサインが出やすいので、無理に歩かせることは避けてください。

 

・暗くなると歩かない、物にぶつかる
暗い場所で動かなくなったり、物にぶつかったりする場合は、視力が低下しているおそれがあります。シニア犬では白内障や加齢による視力の衰えが見られることが多いため、暗い時間帯の散歩を避け、安全なコースを選ぶことが大切です。

 

こうした異変が一時的で、その後は特に問題なく運動できている場合には、過度な心配は不要です。
しかし、次の日も同じサインが見られたり、運動をしていないときにまで症状が現れたりする場合は、早めに動物病院へ相談するようにしましょう。病気やケガの初期サインである可能性も考えられます。

 

5.おわりに


シニア期の愛犬との生活では、体の変化に合わせたお散歩や運動が欠かせません。「どのくらい散歩をさせればよいのか」と悩む飼い主様も多いかと思いますが、基本的には若いころの散歩時間を基準に、年齢や体調を見ながら無理のない範囲で調整していくことが大切です。

特に注意したいのは、筋肉は一度失うと元に戻るまでに時間がかかることです。愛犬が元気であれば、できるだけこれまでの運動習慣を続けていくように心がけましょう。それが、健康的で穏やかな日々を長く保つための大切なポイントです。

もし散歩や運動について不安に思うことや、愛犬の体調が気になることがありましたら、どうぞお気軽に当院にご相談ください。飼い主様と愛犬が安心してシニア期を過ごせるよう、全力でサポートいたします。

 

■関連する記事はこちらで解説しています
見逃していませんか?シニア犬の認知症|初期症状とケアのポイント
シニア期の犬や猫の健康管理|定期健診でできる予防と早期発見の重要性
犬のシニア期は何歳から?| 獣医師が解説する老犬のサインと健康管理のポイント
高齢犬の心臓病|初期症状から予防法まで獣医師が徹底解説
高齢犬の歯周病、「治療できない」と諦める前に|適切なケアで快適な生活をサポート

 

にゅうた動物病院|相模原市 相模大野・東林間の動物病院
診療内容についてはこちらから

  • にゅうた動物病院コラム
  • ブログ
  • 公式インスタグラム
  • LINE
  • 動物ナビ
トップに戻る